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犬の副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)

症例は15歳のミニチュアダックスフンドです。元気や食欲は問題ないですが、体重7kgのわんちゃんで1日に700-800mlの水を飲むとのことで来院されました。「多飲・多尿」の定義として、1kg当たり100ml/日以上飲んでいるようなら飲み過ぎです。飲んでる量が多ければ尿量も増えることになります。

身体検査にて腹部が膨れている所見(腹囲膨満)が認められ、超音波検査にて左右の副腎腫大が認められました(正常:短径3-5mm)。

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ホルモン検査としてACTH刺激試験を実施し、刺激後のコルチゾール高値を認めました。

刺激前コルチゾール:5.3㎍/dl、刺激後コルチゾール:34.1㎍/dl↑↑

 

診断:副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)

副腎という臓器は生命維持に必要なホルモンをつくっています。皮質という場所でストレスホルモンであるコルチゾールを、髄質という場所で血圧の調節を担うアドレナリンなどを分泌します。解剖学的に腎臓の内側、大動脈や大静脈といった大血管の近くに位置しています。

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クッシング症候群は発生機序により、①脳下垂体の腫瘍によって副腎皮質刺激ホルモンが持続的に過剰分泌されることに起因する下垂体性クッシングと、②副腎皮質の腫瘍に起因する副腎腫瘍性クッシングに分類されます。それぞれ①では副腎の両側性腫大、②では副腎の片側性に腫瘍化、した所見が認められます。自然発生の割合として①80~85%、②15~20%といわれています。

症状としてほとんどの症例が多飲・多尿・多食が認められます。慢性経過してホルモンの影響が続くと、皮膚が薄くなったり、脱毛が認められたり、筋肉が萎縮して腹囲膨満や呼吸困難(パンティング)が起きたりします。また、併発疾患として、急死の原因となる血栓をつくりやすくなる事も知られています。

 

本症例は、副腎の両側性腫大および典型的なACTH刺激試験の結果でしたので、下垂体性クッシングと考えられます。頭蓋内の腫瘍のため、なかなか外科的摘出は難しい事が多く、当院では副腎皮質ホルモンの過剰分泌を抑制するトリロスタンという内服薬で治療を行なっています。低量からスタートし、飲水量をモニターしながら症例症例によって適切な薬用量を決定していきます。

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数ヶ月後には飲水量1日400-500mlに落ち着きました。原因(下垂体の腫瘍)をどうにかしているわけではないので、治る病気ではありません。お薬でホルモンの影響が出ないようにコントロールしていく疾患です。

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本症例は、オーナー様のお力添えもあり、約3年経過しますが元気に生活できています。変わったことがあればいつでもご相談ください。よろしくお願いいたします!!