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犬の原発緑内障

症例は7歳の去勢♂柴犬です。他院にて左眼の緑内障と診断され、点眼による眼圧のコントロールができず視覚を失い、痛みが続いているとのことで来院されました。

当院の眼科検査により、左眼の視覚消失、結膜充血、上強膜のうっ血、角膜浮腫、眼圧の上昇(55‐60mmHg)が確認され、眼エコー検査により眼球の腫大も認められました。

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診断:左眼原発緑内障【慢性経過で視覚消失し、牛眼傾向あり】

犬の原発緑内障は柴犬やシーズー、コッカ-スパニエル、チワワといった犬種に多いと言われており、遺伝的素因が示唆されています。片眼の緑内障の場合なかなか症状がはっきりせず、初期の状態を見つけるのが難しく、すでに視覚を失っていることもあります。結構わんちゃんは片眼が見えていると普通に生活できてしまいます。眼圧の高い状態が48時間以上続いてしまうと視神経が障害され視覚を失ってしまうといわれています。

 

本症例は慢性経過で点眼による眼圧コントロールが難しい状態が続いており、すでに視覚が失われていました。この場合、眼圧がコントロール出来なければ痛みが続いてしまったり、眼がどんどん巨大化してきたり(牛眼)、それにより二次的な障害を招いたりしてきます。そのため当院ではシリコンボール義眼を挿入して、痛みからの解放、美容的に良い状態の眼の獲得を行っていきます。

眼球の外側の膜である角膜と強膜を残し、内容物である虹彩・毛様体・水晶体・網膜・脈絡膜を摘出し、止血・洗浄して空になったスペースにシリコンボールを挿入していきます。髪の毛より細い糸を使って切開した部分を丁寧に縫合していきます。

 

〔術後2週間〕一時的に赤みが増します。角膜辺縁部の血管新生です。

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しばらくは点眼や疼痛緩和のための内服薬が必要になりますが、最終的には眼の潤いを維持するためのヒアルロン酸点眼のみでコントロール可能な場合が多いです。本症例も術後約1か月の頃にはヒアルロン酸のみにできました。ただ、原発緑内障の場合時間をおいて逆の眼にも発症するリスクがあるため、少しでも予防するためにマイルドな眼圧降下作用のあるチモロール点眼薬を右眼に付けてもらっています。

〔術後2か月〕赤みも取れてグレーっぽく落ち着きました。

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定期的な健診は行っていきますが、逆眼(ラストアイ)の緑内障発症にいち早く気付けるのはいつも一緒にいる飼い主様です。ラストアイに発症すると視覚が完全に障害されてきますので、明らかに活動性に変化がみられると思います。少しでも違和感を感じたらすぐにご相談ください。

何卒よろしくお願いいたします。