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犬の橈尺骨骨折、細菌性骨髄炎

症例は7か月齢のヨークシャーテリアちゃんです。2か月前に右前足を痛めて他院を受診したが、骨折ではないとの診断で様子見となっていました。ずっとびっこをひいており、最近から熱っぽく元気と食欲がなくなってきたとのことで当院を受診されました。

身体検査では、右前肢の前腕骨遠位部で背側に反り返って固まっている状況と、力は入らず手根部で左右方向への可動域拡大所見が認められ、患部は重度に腫脹し、体温39.6℃の発熱も認められました。レントゲン検査では、右前肢橈骨・尺骨の遠位端にて骨折所見が認められました。

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診断:右前肢橈尺骨遠位端骨折

ある程度慢性的に経過していることで異常な形で癒着し、跛行は示すが顕著な疼痛はなく、時折着地もするような状況でした。

 

飼い主様と相談し、早急に外科的整復を実施していくこととしました。

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骨折部は背側面で斜めに割れており、勝手に背側へ弯曲する状態にありました。まず手根部より髄内ピンを刺入し骨が反り返らないように固定しました。その後、ロッキングプレートにて遠位2本、近位3本のスクリュー固定を実施しました。

(術後レントゲン)

極力骨折部位が真っすぐに近くなった状態で固定されているのを確認し、バンテージを巻いて終了としました。

 

術後3日間で退院し、安静で生活をしてもらいました。しかし、退院から1週間の経過でなぜか腹部がどんどん膨らんできて、検査をすると腹水が大量に溜まっている状態が確認されました。腹水検査では好中球という免疫細胞が出現している炎症性浸出液と判断しました。浸出液が出る原因はいろいろなことが考えられますが、尿の漏れや胆汁の漏れ、消化管穿孔などの緊急疾患は除外できました。ただ、外注にて感受性検査を実施したところ菌が培養されたため、すぐに感受性抗生剤を投与していきました。抗生剤投与から約2週間でお腹の膨らみ・腹水は消失し、元気食欲も戻っていきました。ただ、血液の炎症反応は術後2か月半まで残っており、長期的な抗生物質の投与が必要になりました。

右前肢の術後の経過は問題なく順調に治癒していました。

 

今回の術後の腹水の原因は細菌感染です。最初に骨折してから慢性的に経過していたこと、術前に発熱や元気・食欲の不振が顕著に認められていたことを考えると、細菌性の骨髄炎を起こしていた可能性が高いと考えられます。腹水が検出された時点ですぐに感受性検査を実施し、抗生剤を早期に投与できたことで大事に至らず治癒していったと考えられます。

(経過のレントゲン)

骨折は早期に診断し治療することがとても大切だと感じた症例でした。今では髄内に設置したピンも除去し、元気に走り回って生活できています。本当に良かったです。

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