症例は16歳の三毛猫ちゃんです。
間欠的な嘔吐と便が出づらく、うんちに血が付くとのことで来院されました。直腸検査にて、肛門から7-8cm入ったとこの腸管が全周で硬く肥厚しており、顕著に狭窄しているのが認められました。小指が通らないくらい狭くなっていました。
高齢猫ちゃんにこういう所見が認められる場合、多くは直腸の腫瘍が考えられます。症状の改善および原因の追及を目的に、外科的処置を実施していきました。この場所にアプローチする方法は、肛門から直腸を引っ張り出し、病変部を切除していくプルスルー法です。癌の疑いも強いため、直腸全層を切除していきました。
手術部は肛門より引っ張って処置をしているので、外からの見た目は術前も術後も変わりありません。
(術前)
(術後)
術後の回復は良好で3日目には退院できました。
病理検査結果は予想通り”直腸腺癌(直腸がん)”という悪性の腫瘍でした。脈管内の浸潤はなく、切除マージンはきれいでしたが、腸管の外側に腫瘍細胞が一部露出しているとのことで、再発や転移に注意したモニタリングが必要になっていきます。
手術から1ヶ月経つ頃には、吐くことはなくなり、元気や食欲も回復し、親指くらいの太さの便が出るようになっているとのことでした。直腸検査でも狭窄はわずかで血が付着することもなくなりました。
高齢での血便や排便障害は注意が必要ですね!!変わったことがあればいつでもご相談ください。
よろしくお願いいたします。
はじめまして。
猫さんの直腸腺癌を調べていて辿り着きました。
私の16歳の猫さんが直腸腺癌です。
血便が出てから食物アレルギーを疑いフードを色々変えてみたり、
ステロイドや抗生剤・消炎剤と試しましたが改善しませんでした。
やっと腺癌だと分かったのが血便が出てから8か月後でした。
血便が出だした時にすぐに病院に行きました。
便の検査(PCRもしました)では問題なく、食欲もあり体重も減っていませんでした。
猫の直腸がんは珍しいので違うだろうと言われ、単純な私も「そうなんですか」と暢気に思っていました。
ですが最近になって肛門から5・6㎝の所が狭く硬くなっていて、
内視鏡ではないのですが採取出来たので組織検査をしたら直腸腺癌だと報告が来ました。
正直頭が真っ白です。
ウチの猫さん、腎不全なんです。
高齢ですし、全身麻酔なんて出来ない・・・と思っていたのですが、手術しかないですよね。
もう不安で仕方ないです。
実はこちらのブログで猫ちゃんの直腸腺癌の手術の記事は最近ではなく、
以前に検索して読ませて頂いていました。
猫ちゃんの直腸癌は珍しいと言われても、もしかしてと思っていたんです。
こちらの病院はさほど遠くなく、一度相談してみれば良かったと深く後悔してます。
こちらで手術された猫ちゃんたちは今もお元気でしょうか。
近く、紹介された病院へ行く事になっています。
不安です・・・。
コメントありがとうございます。高齢猫ちゃんの直腸腺癌の予後はなかなか良いことが言えませんが、外科的な切除は現在問題となっている血便・排便障害を解消するためには必要処置になります。ただ外科的切除で全てがクリアーになるわけではなく、数ヶ月から半年くらいでリンパ節や肺への転移を引き起こし別の問題が生じてくる可能性が高い腫瘍です。根治治療がなかなか難しい腫瘍の一つになります。
手術の適応に関しては腎臓の状態と相談となりますが、麻酔のリスクが高いようであれば緩和ケアとして便を軟らかくしてあげる下剤やフードの検討が必要になってくると思います。しっかりかかりつけさんと相談して不安なことは少しでも解消して、愛猫ちゃんのストレス緩和に努めてあげて下さい。
本人の状態を診察した訳ではありませんので一つの参考意見ととらえてください。よろしくお願い致します。
よろしくお願いします
全く同じ手術を他院で受けたのですが‥
こちらの術後の写真を見て、うちの子の肛門とずいぶん違くて不安になっています。
写真のように肛門が小さくなく大きいのです。そして肛門の力が戻らずうんちが出てきてしまいます。そして入院中ちゃんと見てくれてなかったのか、肛門が周りがただれていて、凸凹していて痛くて鳴きます。
手術して1ヶ月ほど経ちますが、まだ痛いと鳴きます‥>_<
不安でなりません。失敗されたという事でしょうか?
梶原様コメントありがとうございます。
同様の手術をした猫ちゃんがいるとのことですが、術前の腫瘍の広がり度合いやしっかり切除出来たかどうかなどで、術後の肛門の状態が違うのかもしれません。プルスルー切除の一般的な合併症としては一時的~永続的な便失禁があげられます。痛みがあるようであればしっかり状態を把握し内科的な管理を行なっていく必要があるかもしれません。
本人の状態を直接みていないのではっきりとしたことは言えませんが、手術をされたかかりつけさんとしっかり相談し、今後の治療を考えていく必要があるように思います。愛猫ちゃんが元気になることを願っております。
あくまでも実際に診察したわけではありませんので一つの参考意見ととらえて下さい。よろしくお願いいたします。
ブログ拝見させていただきました。
現在12歳のオス猫が去年の8月頃から便秘の症状が出始め、病院へ通っていましたが当初は便秘じゃないかという診断でした。下剤を飲ませたり便が柔らかくなるフードに変えたりもしましたが改善されず、12月に入る頃には元々5キロあった体重が3.7キロまで落ち入院をすることになりました。その際の検査で直腸癌と判明し肛門から5センチくらいのところに2センチ程の腫瘍ができているとのことでした。CTをとり病理センターでの検査を終えリンパ節が腫れている部分がありもしかしたら転移をしているかもしれないが腫れているだけかもしれないとのこと。外科的手術をするしか方法はなく、その場合肛門の温存は難しく人工肛門になると説明を受けました。
ですがかかりつけの先生も人工肛門の手術は初めてのようで、術後どういったケアが必要になるのか伺っても「専用の袋の様なものがあったと思います」などとざっくりとした回答だっため正直不安しかありません。。
今は固形の便はほぼ出ておらず、血の混じったほぼ液体の様な便を頑張ってふんばって出している状態で、手術をしないとこのまま排便困難となり死に至るかもしれないと考えると手術をする他ないのかもしれませんが、こちらの猫ちゃんを見ると本当に人工肛門という選択肢しかないのかという思いが強くなってしまいます。。
直腸癌や人工肛門の例が少なく調べても調べても十分な情報が得られず手術をするという決断が正しいのかわかりません。
本当に人工肛門しか方法はないのか、もし人工肛門になった場合どの様なケアが必要になるのかご教示いただけましたら幸です。。
ジェリー様、コメントありがとうございます。愛猫ちゃんの直腸腺癌ついてですが、まず第一に今ある局所的な問題(腸管の物理的閉塞)を解決するには外科的切除がどうしても必要になります。浸潤性や転移性の高い腫瘍なので外科的に切除できたとしても数年後に再発や転移をしてくる可能性も秘めています。手術方法に関しては、肛門から5㎝辺りに発生しどこまで浸潤しているかによってプルスルーの適応なのか開腹での手術が必要なのかが変わってくると思います。一般的に直腸検査で指で届く距離であればプルスルーを選択することが多いと思います。開腹で直腸にアプローチしようとした場合は骨盤の一部を骨切りする必要があり、侵襲性が高い処置になります。CT検査を実施しているのでしっかり判断されているかと思いますが、不安なことがあればかかりつけさんとゆっくり相談してみると良いかと思います。それでも不安が残るなら腫瘍に強い専門医へのセカンドオピニオンという選択も検討すべきだと思います。
人工肛門についてですが、当院でも実施したことはありません。基本的にはお腹側に直腸を開口させ、そこに専用の袋を取り付けて便の管理をしていく形になると思います。正常な肛門ではありませんので腸の中で便を貯めるということはでず、排便行為はなく便が流れてきたら袋の中へ垂れ流しになると思われます。また、自分で舐めたりかじったりしないようにエリザベスカラーは必須になるかもしれません(動きが制限されるかも)。最近では専用の服などが売られていてカラーを着けなくても管理ができるのかもしれません。あまり詳しいことを記載できず申し訳ございません。
あくまで直接診察をしているわけではありませんので、一つの参考意見ととらえて下さい。愛猫ちゃんの治療がうまくいくことを願っております。何卒よろしくお願いいたします。