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犬の肺腫瘍

症例は13歳のシーズーです。1日4ー5回咳が出るとのことで来院されました。

レントゲン検査にて、右肺中葉領域に3㎝大の孤立性腫瘤性不透過陰影を認めました。(横隔膜尾側にうつる不透過陰影は偶発的に認められた胆石です。)

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臨床診断:原発性肺腫瘍

疫学的に最も多い腫瘍は肺腺癌です。その他、予後の悪い扁平上皮癌やリンパ腫などが鑑別疾患として挙げられます。飼い主様と治療方針を相談し、早期に外科的切除を実施していくこととしました。

 

左横臥位で右側第5肋間開胸にてアプローチしていきました。局所麻酔薬を併用し、できる限りの疼痛管理も行っていきます。きれいなピンク色をしたものは酸素をしっかり含んだ肺になります。赤黒く変色した腫瘤病変が観察されます。

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腫瘤は中葉基部に位置し気管支の根元、後葉辺縁近くまで分布しており、血管や気管支群の分離が大変であった。丁寧に処理し、腫瘤と一緒に右の前・中葉を一括切除しました。また、軽度に腫大した中気管気管支リンパ節を一部切除生検しました。

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出血や空気の漏れがないことを確認して、胸腔ドレーンを設置し、閉胸して終了です。

 

(摘出組織:肺腫瘤)

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(摘出組織:リンパ節)

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病理組織検査:肺腺癌 Pulmonary adenocarcinoma、マージンクリアー、リンパ節転移なし

肺腺癌は肺胞上皮由来の悪性腫瘍です。犬の肺に発生する23%で遠隔転移を来すことがあります。

 

術後2週間、咳もでなくなり、元気食欲も回復した姿を見せてくれました。要注意での経過観察が必要ですが原因を取り除くことができてよかったです。咳の症状は気管虚脱などの呼吸器疾患で認められることが多いですが、稀に腫瘍性疾患が隠れていることがあります。治療方針が大きく変わってきますのでしっかり診断することが重要ですね。

愛犬・愛猫ちゃんに気になる症状がみられたらいつでもご相談ください。よろしくお願いいたします。