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犬の角膜穿孔、結膜フラップ

症例は14歳のチワワです。1週間前に左眼の広範囲な融解性角膜潰瘍を引き起こし、穿孔しないか注意して経過をみていた症例でした。抗生剤やヒアルロン酸の頻回点眼を実施していましたが、急にしょぼつきがひどくなり角膜表面が剥がれているみたいとのことで来院されました。

眼科検査にて、左眼は角膜中央が大きく欠損し(一部めくれあがっています)、内部の水晶体が前方へ変位し穴を塞いでいる状態でした。周囲結膜より多数の血管が角膜へ新生していました。

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診断:角膜穿孔

角膜穿孔は緊急疾患です。角膜に大きな穴が空いてしまっているため強い痛みや炎症が起き、放っておくと内容物が飛び出し眼がつぶれてしまいます。眼球を温存するためには穴を塞ぐ手術が必要となります。

 

本症例の穴は中央に位置し比較的大きいため、結膜を使って塞いでいくこととしました。

まずめくれ上がった角膜を切除し、前方脱臼した水晶体を用手にて後方へ押し戻します。穴がいったん解除され中の房水が漏れてしぼみます。

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外側の12∼3時方向の結膜を有形状フラップとして確保し(できるだけうすく作成)、欠損部角膜に縫着していきます。この時は髪の毛よりも細い糸を使用していきますので拡大鏡ルーペをかけて丁寧に実施していきます。

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約2週間ほど外界と遮断しておくために、眼瞼を2/3程縫合閉鎖しておきます。内側1/3は開いているので目薬は可能です。

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治癒を促進するために自己血清ヒアルロン酸点眼や感染ケアのための抗生物質の点眼をしようしていきました。

術後2週間、眼瞼縫合を解除した時点です。縫合糸は残りますが、結膜はしっかり角膜に癒着し、穴を塞いで眼球構造が保たれていることが確認できます。

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術後1ヶ月では、縫合糸もなくなりきれいに整復できていることが確認できます。めやにやしょぼつきなどなく本人もほぼ気にしていないとのことでした。

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今回の症例は角膜に比較的大きな穴が中央に空いた症例でした。穴の大きさや場所によって整復方法は変わってきますが、結膜組織は角膜に比べて厚く、血流を持っている組織なので整復強度は高いです。ただ、白い組織なので透明な角膜に縫い付けた場合、治癒した後の視野には大きく障害が残ります。そのため通常であれば、角膜の治癒が完了したら有茎状につながっている結膜を切断し、血流を絶つことで白濁した角結膜組織が徐々に透明性を取り戻すように促していくことになります。本症例は元々白内障があり視覚を失っていた状態であったためフラップ結膜はそのまま残し維持した形になります。

 

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