症例は8歳のMix猫ちゃんです。口がただれてて涎が多く、すごく痛がり痩せてきたとのことで来院されました。食べたいが痛くて食べるのを止めてしまうこともあるとのことでした。
口腔内の検査にて、歯石の付着に加えて、口腔粘膜広範囲での発赤、腫脹、びらん、潰瘍、肉芽様組織増生所見が認められ、痛みや出血を伴っていました。
診断:猫の歯肉口内炎
原因としては、口腔内細菌やウイルス(カリシウイルス、FIV、FeLVなど)の関与、免疫反応の異常などが挙げられているが確定はされていません。多くは痛みを伴う口腔の後部粘膜を中心とした病変から始まり、進行すると歯肉全域に発赤を伴うこともあります。治療には内科治療、外科治療がありますが、多くは症状を緩和するために継続しての治療が必要となります。
本症例はかなり慢性化し炎症・痛みがひどい状況でしたので外科的な抜歯が必要でした。歯肉の病変が全域に進行していたため、全顎抜歯を実施しました。
術後は順調に回復し、食欲もしっかり戻り、体重が2.7㎏➡4.0㎏まで増加していきました。ただ、症状が全くなくなったわけではなく少量のよだれや出血は定期的に認められたため、炎症をひかせるためのステロイド剤やウイルスケアとしてのインターフェロン、混合ワクチン接種などの内科治療が必要となりました。
猫の歯肉口内炎は、単なる歯石の付着では説明のつかない広範囲の歯肉や口腔粘膜の炎症や痛みを特徴とし、抜歯やスケーリングをしておしまいというわけにはいかない難治性の疾患です。食欲不振や体重減少にもつながっていきますので気になる症状がみられたら早めにご相談ください。
よろしくお願いいたします。