症例は9歳のミニチュアピンシャーです。当院の身体検査にて上顎歯肉に1㎝弱のできものが見つかった症例です。特に症状はなく、本人も気にする様子は認められませんでした。
口腔内の検査にて、右側上顎第1-2前臼歯部の歯肉から発生し歯間に入り込むように位置する腫瘤性病変を認めました。数か月経過観察を行いましたが大きさに変化はなく進行は認められませんでした。
術前には細胞診検査も実施しましたが、明らかな悪性腫瘍を示唆するような細胞は認められませんでした。
臨床診断:口腔内腫瘍
犬の口腔内に発生する腫瘍は多い順に、悪性黒色腫(メラノーマ)、扁平上皮癌、歯原性腫瘍(良性)、線維肉腫などが挙げられます。本症例は経過や肉眼的所見、細胞診検査などから良性のものが疑われたため、腫瘤発生部の前臼歯2本を含む最小限の顎骨を含めた外科切除を実施していきました。
歯肉を切開し、顎骨切除ラインを電気メスでマーキングし、ラウンドバーにて骨切除を実施しました。
切除後の粘膜を縫合し終了です。
病理組織診断:増殖性混合細胞性歯肉炎
観察される病変は慢性活動性の炎症性病変であり、歯石の付着からの歯周病が関連していることがあります。腫瘍性変化は認められなかったため切除後の予後は良好です。
口腔内腫瘍には悪性腫瘍の発生も多く認められるため、小さいうちに発見し、小さいうちに切除することが何より重要です。日々のデンタルケアやスキンシップの際に口の中を見る癖をつけておくことが早期発見につながると考えられます。
愛犬・愛猫ちゃんの口の中に気になるできものを見つけたら早めにご相談ください。よろしくお願いいたします。