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犬の口腔内悪性黒色腫(下顎)

症例は11歳のダックスフンドです。口の中にできものがあるとのことで来院されました。

口腔内の検査にて、右側下顎第1-3臼歯部歯肉から発生する1.5㎝大の黒っぽい不整形の腫瘤性病変が認められました。

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針細胞診検査にて、核および核小体に異型性を伴う独立円形細胞集塊を認めました。細胞質にはよく見ると所々に黒色顆粒が認められました。

メラノーマ1 メラノーマ3 メラノーマ4

その他臨床学的検査にて異常は認められず、リンパ節や肺への明らかな転移病変は認められませんでした。

 

〔口腔内悪性腫瘍のステージ分類〕

ステージ1:原発腫瘍の直径≦2㎝

ステージ2:2㎝<原発腫瘍の直径≦4㎝

ステージ3:4㎝≦原発腫瘍の直径、または 大きさ関係なく領域リンパ節への転移あり

ステージ4:肺やその他の臓器への遠隔転移あり

 

臨床診断:口腔内悪性黒色腫(メラノーマ)、ステージ1

悪性黒色腫は、口腔内に発生する悪性腫瘍の中で最も多く(60~70%)、急速に成長したり、浸潤性・転移性が強かったり、予後の悪い腫瘍の一つになります。無治療では局所的な問題で食べることができなくなり生存期間中央値MSTは2か月と短いです。外科治療実施により10~12か月との報告があります。化学療法(抗がん剤)の効果は限定的で、有効性の高いものは無いのが現状です。

 

本症例は早期の外科的切除を実施していきました。1㎝程のマージンを確保し腫瘤と共に臼歯3本と下顎骨を切除していきました。

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下顎リンパ節も転移の有無の評価のため一緒に摘出しました。

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病理組織検査:口腔内悪性黒色腫(Oral Malignant Melanoma)

観察される腫瘍細胞には高度な異型性や高頻度の核分裂像(28個/高倍率10視野)が認められることから悪性度の高い腫瘍と判定されました。リンパ節への転移や顎骨への浸潤は認められませんでしたが、術後も慎重な経過観察が必要となっていきます。

 

口腔内の腫瘍には悪性のものも多く発生します。早期発見と早期治療により長期予後につながっていきます。愛犬・愛猫ちゃんの口の中に気になるできものを見つけたらいつでもご相談ください。よろしくお願いいたします。