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犬の後眼部ぶどう膜炎

症例は6歳のフレンチブルドッグです。

2週間前から充血としょぼつきがあり、抗生物質の目薬を使っているが良くならないとのことで来院されました。眼科検査にて、充血と羞明、黄色眼脂が認められ、前房フレアは認められず、眼圧は正常でした。眼底検査では、網膜領域で所々に出血や水疱状病変が認められました。

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眼の超音波検査を実施したところ、両眼ともに網膜・脈絡膜領域で腫脹や嚢胞病変が認められ炎症や浮腫、水疱状網膜剥離が起きていることが示唆されました。(画像:右眼/左眼)

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診断:後眼部ぶどう膜炎

ぶどう膜とは血管が豊富な組織であり、前部の虹彩・毛様体と、後部の脈絡膜に分けられます。本症例は前房フレアが認められなかったことから、後部が主体として起こっている珍しいタイプのぶどう膜炎と診断されます。他の血液検査や血圧測定で異常は認められませんでした。原因としては特殊な感染症なども挙げられますが、多くは自己免疫絡みの病態が考えられます。

 

治療としては、ステロイドによる抗炎症および免疫調整が主体となります。本症例も内服薬と点眼薬の両方を使用していきました。治療開始し3日で充血やしょぼつきは改善し、1週間経つ頃には超音波所見もきれいに改善していました。後部の腫れていた部分は治まり、きれいに円形に確認できます。両眼ともほとんど正常所見です。(画像:右眼/左眼)

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一度、内服薬を切った際にすぐに再発してしまいましたので、長期的にゆっくりと内服薬から減らしていきながら管理していきました。約2年ほど経過を診ながら内服薬および点眼薬をストップし、再発することなく生活できています。

 

ぶどう膜炎の多くは虹彩・毛様体といった前眼部の病変に発生します。今回ぶどう膜炎の指標である前房フレアが認められず、後眼部のみに病変が認められた比較的稀な病態の症例でした。初めて診断しましたが、しっかり超音波検査を実施したことで確定でき、スムーズな治療にもつながっていきました。

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