DSC01444

犬の副腎腫瘍(腺腫)

症例は7歳のシーズーです。健康診断で来院され、特に気になる症状は認められませんでした。

各種臨床学的検査を実施したところ、腹部の超音波検査にて左副腎に大きさ1㎝大の腫瘤形成が認められました。

(左副腎:腫瘤形成あり)

2030mana4 2030mana5

(右副腎:正常6mm大)

2030mana6

ACTH刺激試験:投与前コルチゾール1.9μg/dl、投与後コルチゾール14.2μg/dl

 

臨床診断:左側副腎腫瘍

副腎の腫瘍には、副腎皮質(7-8割)にできる良性の腺腫/悪性の腺癌と、副腎髄質(2-3割)にできる褐色細胞腫という腫瘍があります。治療には第一に外科的切除があげられます。ただ、周術期の死亡率は20%程あり、副腎という臓器が大血管の近くに位置していることや、大型化すると腎静脈や横隔副静脈を巻き込んだり、血管の中に腫瘍栓を形成したりするためリスクが高いと考えられます。また、褐色細胞腫の場合は術中の操作により血圧が急激に上昇する危険もあり、いつでも対処できるよう準備をしておかなければなりません。

 

本症例は比較的小さい早期に発見できており、周囲との癒着や血管への浸潤など認められない状況であったため、飼い主様と相談し外科的切除を実施していきました。

IMG_1599

副腎はお腹の中の一番深いところ(背部)に位置しており、大血管とも近接しているためアプローチには大きな切開が必要になります。そして、腸や脂肪などの臓器をよけながら腹腔の中で作業していくことになります。

DSC01071 DSC01074 DSC01073

腫瘍を周囲の組織から剥離し、分布する血管を丁寧に処理します。細かい血管はバイポーラにて焼絡、太めの血管は血管クリップにてしっかり止血していきました。

DSC01076  DSC01077  DSC01078

腫瘍を摘出し、出血がないことを確認し、定法通り閉腹し終了です。腫瘍を剥離する際に軽度の血圧上昇を認めましたが大きな問題もなく麻酔は安定していました。

DSC01080

術後の経過もスムーズで3日目には退院できました。

 

病理診断:副腎皮質腺腫(脈管内浸潤なし、マージンクリアー)

良性腫瘍で切除により良好な予後が期待されます。

DSC01443  DSC01444

術後半年経ちますが、元気に健康に生活できています。

 

今回の症例は症状を全く伴わない副腎腫瘍でした。定期的な健康診断により早期発見・早期治療を実施しできました。わんちゃん・ねこちゃんは7歳を超えるシニア期に入ります。元気そうに見えても1年に1回は健康診断を勧めたいと思います。

よろしくお願いいたします!!