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猫のデスメ膜瘤

症例は16歳の三毛猫ちゃんです。目が充血しており、ひどいとのことで来院されました。以前より左眼は白っぽくなっていたが、ここ数日で表面がでこぼこしてきたとのことです。

〔右眼〕結膜の充血と浮腫がひどく黄色眼脂が認められました。角膜には一部炎症、血管新生所見が認められました。

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〔左眼〕結膜の充血と浮腫はひどく黄色眼脂が認められました。角膜は広範囲で白濁を認め、デスメ膜瘤を形成していました。

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診断:右眼角結膜炎、左眼重度角膜潰瘍/デスメ膜瘤/結膜炎

角膜は外側から上皮・実質・内皮(デスメ膜)の3層構造で構成されています。重度の潰瘍で実質まで欠損すると、一番内側の薄いデスメ膜だけになってしまい眼内の水圧に押されることで水風船のように膨らんでしまいます。ここに穴が空くと角膜が穿孔し、目が潰れてしまいます。そのため、デスメ膜瘤は眼に穴が空いてしまう一歩手前の危険な状態ということになります。外との接触を遮断するために、瞬膜フラップや眼瞼縫合といった被覆処置をすることもあります。

 

本症例は、主病因としてウイルスや細菌感染が考えられたため、抗生物質の内服薬、点眼薬を使用し要注意で経過をみていきました。自分でこすって穴が空いたら終わりなのでエリザベスカラーも使用していきました。

〔治療3日目:右眼/左眼〕両眼の充血と浮腫は改善してきました。まだ左眼のデスメ膜瘤は残っています。

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〔治療16日目:右眼/左眼〕両眼の充血と浮腫はほぼ消失しています。左眼のデスメ膜瘤は中央に少しだけ残っています。

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〔治療30日目:正面/左眼〕左眼のデスメ膜瘤は消失し、角膜は表面が滑らかになっています。白濁や血管新生(潰瘍部を直そうとしている反応)が残りますが、穿孔のリスクはほぼなくなりましたので点眼を継続しゆっくり良化していくのをみていくことになります。

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今回は高齢の猫ちゃんの重度角膜潰瘍からのデスメ膜瘤の症例でした。穿孔しなくて本当に良かったです。愛犬・愛猫ちゃんの目に変わったことがあれば何でもお気軽にご相談ください。よろしくお願いいたします。