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犬の脾臓辺縁帯リンパ腫(Marginal Zone Lymphoma;MZL)

症例は15歳のミックス犬、去勢済雄です。数日前から様子がおかしく、異常な興奮状態だったり、熱が高かったり、元気食欲も落ちている状態でした。

来院時は横倒しの意識不明瞭な状態で、熱も40℃と高く、貧血や血小板の減少なども認められ、極めて危険な状態でした。腹部の超音波検査にて、脾臓に最大4.5㎝径の多発する腫瘤性病変が認められ、ここが本症状の根本原因の可能性が高いと考えられました。

 

診断:多発性脾臓腫瘤

脾臓の腫瘤は血管肉腫など悪性腫瘍も多く発生します。一般状態も悪いため、全身麻酔下での外科的切除にはリスクが伴いますが、飼い主様と相談し緊急的に手術を実施していきました。

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手術は短時間で済むように血管シーリングシステム(ソノサージ)を使用し、多発する脾臓腫瘤の摘出を実施していきました。腫瘤の一部に大網の癒着が認められ、過去に出血したことが示唆されました。

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血圧は安定していましたが、麻酔の覚醒は悪く、術後の集中治療が必要でした。ICU管理・輸液管理・血栓予防・強制給餌/給水などを実施し、術後3日目に自力でしっかり歩けるようになり食欲も回復し、退院できました。術後14日目の抜糸時には、多少ヨタつくことはあるが自力で歩き回り、食欲もしっかりある状態を確認できました。CRPの上昇や腎数値の上昇がしばらく残りましたが3か月経つ頃にはだいぶ落ち着いてくれました。

 

病理診断・免疫染色:脾臓のB細胞リンパ腫

脾臓に限局したB細胞リンパ腫は一般的に悪性度が低いものであると考えられています。今回のリンパ腫はWHO分類に当てはめると「辺縁帯リンパ腫 marginal zone liphoma」に相当し、犬の脾臓で多く認められます。脾臓に限局して発生している場合には低悪性度のリンパ腫として扱われ、術後の化学療法は必要ないと考えられています。ただし、腫瘍細胞が血液中や多臓器に出現している場合には積極的な治療の対象となります。

 

今回の脾臓腫瘤は悪性度の低いタイプのリンパ腫でした。初めの症状が重たかったですが、諦めずにすぐに治療してほんとに良かったです。約1年経過しますが、術後の抗がん剤などは使用せず無治療で、再発転移なく元気に生活できています!!今後も定期的な経過観察を行っていきます。

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