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猫の糖尿病

14歳の去勢オスMix猫です。具合が悪いとの主訴で来院されました。

身体検査にて、重度の脱水と低体温35.6℃(正常:37.5~39℃)が認められました。血液検査にて血糖値592㎎/㎏上昇、尿検査にて尿糖および尿ケトンの陽性反応が認められました。

診断:糖尿病、ケトアシドーシス

 

猫の糖尿病は、肥満やそれに続発したインスリン抵抗性が発症に関与しているといわれています。病態は、膵臓から分泌され、血糖値を下げる作用がある”インスリン“というホルモンが欠乏することで高血糖を引き起こし、腎臓からの再吸収の限界を超えてしまうことで尿にも糖が検出されるようになります。糖尿病になると、多飲多尿、多食、体重減少がみられるようになります。

インスリンは糖をエネルギーとして消費されるように働きかけるホルモンです。このインスリンが欠乏している状態だと糖をエネルギーとして利用できなくなり(糖尿病)、体は脂肪を燃焼してエネルギーを作ろうとします。この状況が長く続くとケトン体という成分が体に蓄積しアシドーシスとなり、命にかかわる重篤な状態を引き起こします(糖尿病性ケトアシドーシス)。

 

本症例も元気・食欲なくかなり危険な状況でしたので、入院での集中治療を実施していきました。インスリン治療や電解質・アシドーシスの補正のための輸液療法、および吐き気を抑えながらの食事療法(強制給餌)です。元気が回復し、尿中のケトンが検出されなくなるまで5日間の入院が必要となりました。

退院後も自宅でのインスリン注射や食事の管理が必要となりますので、飼い主様の協力が必要不可欠です。猫ちゃんは時間をかけて食事をすることが多いため、インスリン製剤としては長くゆっくり血糖値をさげてくれるランタスを使用していきました。初めは低量からの調節となり、血糖値をモニターしながら必要なインスリンの量を決定していきます。症例に応じてペンタイプとシリンジタイプがあります。

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インスリン治療で大事なことは、以下の3つです。

①低血糖にならないこと(インスリンが多過ぎると低血糖を引き起こし命にかかわります。)

②尿ケトンが陰性であること

③体重が安定していること、減らないこと

 

約1年経ちますが飼い主様のお力添えのおかげで、食欲はしっかりあり体重も安定しており、元気に生活できています。現在ランタスは朝2単位ー夜1単位で使用しています。

愛犬・愛猫ちゃんの飲水量が増えた、異常に食欲があるなど気になる症状があればいつでもご相談ください。よろしくお願いいたします。