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猫の後十字靭帯断裂・損傷

症例は1歳の雄のベンガルです。2週間前に同居猫とケージ内で取っ組み合いをしたことがきっかけで右後ろ脚をかばって歩くようになったとのことで来院されました。

身体検査にて顕著な跛行が確認されました。鎮静下にて検査を実施したところ、触診にて膝関節を外旋させた際に明らかにずれが生じ、カクカクとクリック音が確認されました。また、レントゲン検査でも回旋させた際に顕著な大腿骨と下腿骨のズレが生じることが確認できました。犬でよく認められる前十字靭帯の評価では特に異常所見は認められず、外反・内反でのズレも確認されませんでした。

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膝の関節にある靭帯は、前十字靭帯と後十字靭帯、内・外側の側副靭帯が存在します。今回の検査にて、前十字靭帯や側副靭帯は明らかな損傷はなさそうでしたので、後十字靭帯の異常が最も可能性が高いと判断されます。

仮診断:後十字靭帯断裂・損傷疑い

 

10日間程内科治療を実施しましたが、かばって歩く状態は変わらず、外科的整復を実施していくこととしました。

右膝関節にアプローチし、関節包内を観察したところ、左右の側副靭帯および前十字靭帯が正常な状態にあることが確認されました。触診では関節の動揺は著しく、後十字靭帯の断裂が示唆されたため、関節外法によるラテラルスーチャーにて人工靭帯を形成していきました。関節の動揺が生じないこと、スムーズに屈伸できることを確認し術創を閉鎖して終了としました。

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術後2週間はまだ右後肢をうまく使えていない状態でしたが、1か月経つ頃には走ったり跳んだりできるようになっているとのことでした。屈伸運動で多少のクリック音は残っていましたが動揺はなく改善傾向と判断されました。2か月後にはたまにヨタつくことはあるがほぼ問題なく使えるようになっていることが飼い主様の撮ってきた動画で確認できました。

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今回の症例は小動物では比較的まれな後十字靭帯断裂・損傷でした。一般的に後十字靭帯は前十字靭帯よりも強度が高く、ここの断裂を起こすタイプの外傷は珍しく、特殊な状況があった場合に限られます。今回で言えば、同居猫との取っ組み合いで膝関節が曲がったまま高い場所から落下したなどが考えられます。しっかり除外診断をしたうえでどこに異常があるのか予想しながら外科的整復を検討し、膝関節の安定化を行ったことでスムーズな回復につながったと思われます。

愛犬・愛猫ちゃんの歩行に違和感を感じたらいつでもお気軽にご相談ください。よろしくお願いいたします。