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犬の前十字靱帯断裂・膝蓋骨内方脱臼、滑膜軟骨腫症

症例は9歳の避妊済雌のトイプードルです。朝から急に右後肢をびっこひくとの事で来院されました。

身体検査にて、3本足歩行、膝関節の疼痛、およびドローアーサインを認めました。レントゲン検査にて、膝蓋骨の内方脱臼、および脛骨前方引き出し徴候が認められ、併せて膝関節周囲に多数の石灰化陰影が確認されました。

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(右膝関節)下腿骨が前方へずれているのが分かります。

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(左膝関節)正常な膝関節です。

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診断:前十字靱帯断裂膝蓋骨内方脱臼、関節周囲の石灰化!?

 

本症例は外科的処置により、靱帯の再建、大腿骨滑車溝の造溝術を実施していきました。関節にアプローチした際に多数の白色軟骨様浮遊塊が採取されました。また、断裂した前十字靱帯が観察されました。

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膝の再建として、まず大腿骨滑車の溝を深くしていきます。

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次に、人工靱帯を遠位の種子骨と脛骨粗面にかけ靱帯再建をしていきます。

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丁寧に筋肉、皮下、皮膚を縫合閉鎖し、バンテージを巻いて終了です。

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翌日には退院できました。2週間後には少しずつ足をついて歩くようになり、1ヶ月後にはしっかり着地して歩けるようになりました。1年経った今では違和感なく元気に過ごせています。

 

ちなみに、白色軟骨様組織の正体はというと、小型犬ではとても珍しい二次的病変でした。

病理検査結果:滑膜軟骨腫症

この病変は、滑膜細胞に由来する良性病変で、変性性関節症に続発して発生する事が多く、馬などの大型の動物ではそこそこ認められるようです。犬や猫では稀ですが、本症例は慢性的に膝蓋骨の内方脱臼が存在していたため、それに続発したものと考えられました。しっかりと関節を整復し治療したことで再発しなくなると思われます。

 

愛犬・愛猫ちゃんに変わったことがあればいつでもご相談ください。よろしくお願い致します!!