症例は10歳のボストンテリアです。いびきがひどく興奮するとガーガーうるさく苦しそうな呼吸になるとのことで来院されました。
院内ではいつも興奮気味でガチョウ様呼吸(ストライダー)を示し苦しそうな様子でした。身体検査にて外鼻孔狭窄が認められました。正常な鼻の穴はコンマ型をして解放していますが、本症例はL字型で空気の通り道が顕著に狭くなっています。
また、レントゲン検査にて気管の入口にある軟口蓋が太く長く観察されました。正常では薄く喉部分の気道は広く観察されますが、本症例は軟口蓋が肥厚しており気道も狭くみえます。
〔本症例:短頭種〕
〔正常:非短頭種〕
〔診断〕短頭種気道症候群(BAS;Brachycephalic Airway Syndrome)
短頭種(ブルドッグ、フレンチブルドッグ、パグ、ボストンテリアなど)における外鼻孔狭窄、軟口蓋過長などの解剖学的構造により、いびきやスターター、ストライダーなどの症状を示し、上部気道閉塞を引き起こす症候群です。また、長期間の気道抵抗により喉頭部の二次的な病的変化を引き起こしていきます。こういった犬種は、暑熱環境において呼吸による熱発散がうまくできないため熱中症に陥りやすいというリスクも抱えています。
本症例は外科的整復により狭くなっている気道の拡張を行っていきました。
①外鼻孔狭窄整復術:鼻鏡の一部を切除し、外側に牽引して縫合します。
②軟口蓋過長整復術:口腔からアプローチし、太く長い軟口蓋をちょうど良い長さに切断し短くします。
(処置前)背側から太く長い軟口蓋が被さり、気道を塞いでいました。
(処置後)ちょうど喉頭蓋と接するくらいになり、呼吸により正常に開閉していることが確認できました。
③喉頭小嚢外転:本症例は長期間の気道抵抗があったため、術中の内視鏡検査の際に反転して脱出している喉頭小嚢が確認されました。これも放っておくと気道を塞いだり、異常呼吸の原因となるため、可能な限り切除していきました。
(処置前)声帯の前方に水ぶくれのようにみえる物が反転した喉頭小嚢です。
(処置後)奥にあるV字状の声帯が確認できるようになりました。
術後2週間後にはいびきはほぼなくなり、興奮時に軽度のストライダーが認められる程度になりました。鼻もしっかり拡張しています。呼吸がしやすくなり快適に生活ができるとよいですね。
愛犬・愛猫ちゃんに変わったことがあれば何でもお気軽にご相談下さい。よろしくお願い致します。