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猫の落葉状天疱瘡

症例は2歳去勢♂のMix猫ちゃんです。

鼻や耳、足がハゲてガビガビしているとの主訴で来院されました。結構前からの症状で、良くなったり悪くなったりを繰り返していたようです。身体検査にて、鼻鏡、耳介、爪床部に紅斑、脱毛、黄色痂皮病変が認められました。

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まずはしっかりと細菌や真菌、外部寄生虫の治療をしてみましたが目立った改善は認められませんでした。再度皮膚スタンプの検査を実施し、顕著な好中球の浸潤と棘融解細胞が認められました。

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特殊な免疫絡みの皮膚疾患が考えられたため、皮膚生検を実施していきました。耳介部および四肢の爪床部より組織を採取しました。

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病理検査:表皮角質下に顕著な膿疱形成が認められ、落葉状天疱瘡の可能性が高いとの診断でした。

 

落葉状天疱瘡とは、表皮接着蛋白を標的とする自己抗体により細胞間接着が障害される自己免疫性皮膚疾患です。好発部位は本症例と同様、鼻、耳介、肉球、爪床部で、膿疱や痂皮の形成、膿性滲出物などがあげられます。治療はプレドニゾロンやシクロスポリンなどの免疫調節療法が主体となります。

治療開始から2ヶ月後の写真です。病変はほぼ良化しています。この段階になってゆっくりステロイドを漸減し始めていきました。

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途中鼻だけひどくなりました。

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2週間の局所的なステロイドタイプのローションを併用し、きれいになりました。治療開始約5ヶ月です。

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以降は順調に経過しており、現在(治療開始1年10ヶ月)はプレドニゾロンもシクロスポリンも低量で3日に1回の投薬まで減らせており、皮膚の状態はキレイに維持されています。

 

本症例は珍しい皮膚疾患でしたが、しっかり飼い主さまと相談し、治らない原因を追及し診断して、飼い主さまと一緒に協力して治療できたことで、時間はかかりましたが皮膚の状態をきれいにコントロールすることができています。薬の量もしっかり減らせていることはとても大切なことです。今後も治療は必要になりますが引き続きしっかり一緒にケアできればと思います。

よろしくお願いいたします!!