症例は4歳の去勢雄の猫ちゃんです。
数日前からトイレに何度も通うが尿が出ず元気も食欲も落ちているとのことで来院されました。各種検査にて、膀胱がパンパンに腫大し硬結しており、ストラバイト結晶により尿道がふさがっている状態でした。さらに、尿が出ないことで腎臓にも障害がでており、血液検査にて腎不全の兆候が認められました。
診断:尿道閉塞および腎後性急性腎不全
猫のストラバイト結晶による尿道閉塞は去勢雄に多く認められます。ペニスの先端のところで解剖学的に尿道が狭くなる部分がありここに細かい結晶が蓄積し尿が出なくなります。排尿できなくなると何度もトイレに通ったり、血尿が出たりします。この状態で放っておくと、腎臓にも障害が起き、吐き気や元気・食欲の低下などがみられ、命にかかわる状態に陥ってしまいます。
本性症例はなんとか3Frの尿道カテーテル(一番細いもの)を通し、自動的に尿が排出されるように管理をし、2-3日の点滴による内科治療を実施しました。腎臓はすぐに回復していきましたが、尿道の狭窄がひどくカテーテルを抜いてしまうと自力で排尿ができず、膀胱がパンパンになってしまうため(尿閉状態)、外科的治療である会陰尿道廔を実施していきました。
尿道を周囲組織から分離し、骨盤部の尿道までしっかり露出させます。問題となるペニス部の尿道は切り取ります。
尿道の正中に切開を加え8Frのカテーテル(一番太いもの)がすんなり入ることを確認し、尿道粘膜と皮内を縫合していきます。陰唇を形成するイメージで腹側部は広めに縫合していきます。
術後は3日間ほど尿道カテーテルを入れっぱなしにし、入院管理していきました。元気や食欲は問題なく、4日目にカテーテルを抜去し、自力排尿ができたことを確認し退院としました。
10日後の抜糸時には元気な姿をみせてくれ、排尿も問題なく、きれいな色のおしっこができているとのことでした。
尿道閉塞は緊急疾患です!!!気になる症状がある時は、様子見るのではなくすぐにご相談ください。
よろしくお願いいたします。
お初です。
4歳8ヶ月雄猫。尿閉塞からの急性腎不全で今入院治療中です。
一度は心肺停止したみたいでしたが、現在では回復に向かってる状態。
ただ、尿道が細いとは聞いてます。
やはり手術した方が良いですよね?
未保険なもので、実際幾らほど費用がかかるのか?教えて頂きたいです。
SP様コメントありがとうございます。
愛猫ちゃんの尿道閉塞ですね。快方に向かっているとのことでひとまずよかったです。雄猫の尿道閉塞は原因にもよりけりですが、ストラバイト結晶によるものであればフードによる予防を行っていかないと間違いなく繰り返します。私が極力手術を避けたい方針ですので一度閉塞を起こしただけであれば積極的には勧めないかもしれません。術後の感染などの合併症も懸念されることがありますので。療法食でのケアをしっかり継続し、それでも症状がおこるようであれば手術を進めていくと思います。もちろん尿道の狭窄状態やかかりつけ医さんの考え方にもよりけりですので(外科が得意など)どちらが正解というわけではないと思います。コストに関しては、病院の規模、使う薬、働くスタッフの数、地域性など病院によりけりですので一概にいくらとはいえません。愛猫ちゃん本人の状態や手術の必要性、コストについてなどしっかりかかりつけさんと相談して納得したうえで治療をすすめていくことが大切です。愛猫ちゃんが元気になることを願っております。
あくまで実際に診察したわけではありませんので一つの参考意見ととらえてください。何卒よろしくお願いいたします。