症例は9ヶ月齢のパピヨンちゃんです。
症状は、持続的な左後肢の挙上と時折キャンと鳴いて痛がっているとのことでした。しばらく他院にて痛み止めを処方されましたが改善はありませんでした。院内での歩行検査でも左後肢は挙上し、触診にて顕著な膝蓋骨脱臼グレードⅢ/Ⅳの所見が認められました。
犬の膝蓋骨内方脱臼は、膝のお皿(膝蓋骨)が大腿骨の溝(滑車溝)からはずれ内側にずれていることで筋肉が引っ張られてしまい患肢が挙上してしまう状態をいいます。小型犬に多いですが、グレードの軽いものはお皿が外れたり元に戻ったりして、ほとんど症状を伴わず問題なく生活できることが多いです。しかし、グレードが高く常に挙上していたり、痛みを伴うものは外科的な整復が必要となります。
本症例はグレードが高く痛みも伴い、放っておくとずっと足を上げたままとなり、足の筋肉が萎縮していってしまうことが予想されたため、手術を行っていくこととしました。
手術は膝関節にやや外側からアプローチし、浅くなっている滑車溝を深くする方法です。本症例も内側の溝は顕著に低く、容易にお皿が外れやすい状態でした。ブロック状に滑車の溝を深くするブロック造溝術を実施しました。
術後は数週間バンテージを使用していきます。3日間安静に入院管理しました。帰ってからは着地して歩き回っており、しっかり使えるようになりました。運動量も多く、バンテージも早めに抜去していきました。手術から1ヶ月経った今では元気に走り回れるように回復しました。
犬の膝蓋骨脱臼は小型犬ではよく認められます。ただ、手術が必要になる症例は多くはありません。しっかり症状と肢の状態を確認し、手術の必要性を判断していくことが重要です。気になることがあればお気軽にご相談ください!宜しくお願い致します。