dscn3549

猫の黄疸、肝リピドーシス

症例は10歳の日本猫です。

約1週間前から様子が変で、2-3日前からほぼ飲まず食わずで吐き気が出るようになったとのことで来院されました。各種検査にて、黄疸と肝酵素の上昇、そして顕著な肝細胞の脂肪変性がみつかりました。

dscn2735  dscn3072  dscn3075  dscn3077

血漿も皮膚も耳も目も真っ黄色です。。。

診断は、”肝リピドーシス” です。

ねこちゃんに起こる病気の中でとても厄介な疾患です。発症機序は十分に解明されてはいませんが、数日間の食欲不振により肝臓に脂肪が蓄積し、胆汁の流れが悪くなり肝機能障害を引き起こしていく疾患です。治療は何より口からの栄養補給です!!自分からは食べれないので強制給餌や鼻カテーテルや食道カテーテルなどの処置が必要になる子もいます。しかし、嘔吐などの症状により必要量のエネルギーを得られず重症化することもあり、場合によっては危険な状態に陥ることもあります。治療は長期に及ぶため飼い主様との協力がとても大事になります。

dscn4351  dscn4354  dscn4353

本症例も完治するまで約2か月かかりました。最初の1か月は強制給餌をしても吐いてしまうことが多く黄疸や肝酵素の数値もなかなか改善しませんでした。根気強く食事を入れ、脱水しないように点滴補給をしつつ、飼い主様と協力し病院と自宅を行き来しながら可能な限り食事を入れていくようにしました。1ヶ月過ぎたあたりから、吐く回数も減っていき、少量ずつですが好きな缶詰は食べれるようになっていきました。ただやはり必要量は満たせないので強制給餌は継続していきます。1.5か月後には黄疸も肝酵素も正常化し、吐くこともほぼなくなりました。強制給餌は終了し、自宅で注意しながらしっかり食べれているかを観察してもらいました。2か月後の検診にて血液検査の悪化所見もなく、体重も元に戻り肝リピドーシスの治療を終了することができました。今後は肥満がリスクファクターのひとつでもあるのでダイエットをゆっくり頑張っていく予定です。

 

今回の症例は飼い主様の頑張りがあってはじめて治療が成立するもので、病院とご家族が協力できたことが治療をうまく行えた一番の理由だと思います。本当にありがとうございました。肝リピドーシスはどんなねこちゃんでも起こりうるものです。数日間の食欲不振だけでも要注意です。愛猫に気になることがあればいつでもご相談ください!