症例は8歳のシーズーです。
乳腺のしこりをとってほしいとのことで来院されました。しこりは徐々に大きくなってきた様子でした。身体検査にて、左の第5乳腺領域に3㎝大の凸凹した乳腺腫瘍が確認されました。
わんちゃんの乳腺腫瘍は中高齢の未避妊メスにおいてもっとも一般的に認められる腫瘍です。良性と悪性の比率は1:1と言われていますが、小型犬よりも大型犬、高齢になればなるほど、そして腫瘍のサイズが大きくなればなるほど悪性の比率が高くなります。これらの情報は、良性の腫瘍でも時間の経過により大きくなるにつれて悪性転化を起こしうることを示しています。なので乳腺のしこりをみつけたら良性でも悪性でも小さいうちに切除することが奨められます。また、雌性ホルモンと乳腺腫瘍の発生には強い関連があり、避妊手術することで腫瘍発生率を大きく下げることができます。
本症例は、3㎝大と大きめの腫瘍であったためしっかり取りきるために左第3-5乳腺領域の切除を実施しました。今後の腫瘍発生予防の目的もあり同時に避妊手術も実施しました。
※摘出した組織は病理検査に依頼します。
手術から10日後に抜糸をします。自宅では元気も食欲もあり、傷もほぼ気にすることなくすごせましたとのお言葉をいただきました。手術部の治癒はとても良好で問題なく抜糸できました。依頼していた病理検査は”良性の乳腺腺腫”で完全切除されており、付属のリンパ節も問題なしとの結果です。よって治療はこれでおしまいです!!良性のものでほんとによかったです!!
今回は8歳という比較的高齢のわんちゃんでしたが一般状態が問題ない上での手術であったためスムーズに回復できたものと思われます。元気なうちに手術するのが一番ですね。本症例のように手術をして切除することで完治が望める腫瘍もたくさんあります。体にできものをみつけたら小さいうちに教えてください!高齢での手術に関しては心配な点も多いと思いますが、麻酔をかける際には血液検査やレントゲン検査、超音波検査など全身状態を把握したうえでできる限り注意を払ってリスクの少ないよう行っていきます。
いつでもお気軽にご相談ください。