症例は12歳のミニチュアシュナウザーです。セカンドオピニオンで来院され、1週間前辺りから何となく調子が悪く、散歩後に力が抜けることがあったとのことでした。
血液検査にて中等度の貧血、レントゲン検査や腹部超音波検査にて脾臓から発生する不整なエコーパターンを示す5-7㎝大の腫瘤性病変が複数確認されました。その他、肺や心臓、リンパ節に明らかな転移所見は認められませんでした。
臨床診断:脾臓腫瘤
経過から何度か破裂し腫瘤から出血した可能性があるため、早期の外科切除を行っていきました。
腹部正中切開にてアプローチし、巨大な腫瘤を伴う脾臓を体腔外へ牽引し、出入りする血管を丁寧に処理し切除しました。摘出した脾臓腫瘤は多発しており最も多きいもので11×7㎝ありました。
摘出後に隣接臓器である肝臓を確認すると、表面に小さい血豆状の病変が多数認められ、肝転移が疑われました。
術後は血圧も安定しており、貧血の進行も認められませんでしたので、飼い主様と相談し翌日退院としました。
病理組織検査:脾臓の多発性血管肉腫
血管肉腫は血管内皮細胞由来の悪性腫瘍です。総じて生存期間が短い(中央値4か月以下)ことが知られており、今回のように多発する症例や転移している症例では更に予後は厳しいと考えられます。
本症例は術後約5ヶ月間、抗がん剤などを使用しながら頑張って生きてくれました。進行している場合はなかなか良い治療がないのが現状です。
ただ一部、早期発見により年単位で生きれた症例も経験しているので早めに発見できると変わってくるのかもしれません。早期発見には定期的な画像診断を含むペットドックや新しく出てきたがんマーカー血液検査(NU Q Vet Cancer Test)が有用と考えられます。
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