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犬の腸内異物(毛球)

症例は11歳のミニチュアダックスフンドです。

明け方からずっと吐いていて元気と食欲がないとのことで来院されました。身体検査にて上腹部に固い物が触れ、痛がる様子も見られました。血液検査では、重度の膵酵素(v-Lipa)上昇が認められ、超音波検査にて胃から十二指腸へ続く連続性のシャドーを伴う異物所見が認められました。

エコー

臨床診断:胃~十二指腸内異物疑い、膵炎併発

 

一晩点滴の治療をしながらバリウム造影検査を実施し、消化管の流れを確認していきました。やはり何時間たっても胃から十二指腸にかけての流れが悪く、バリウムを吸着するような閉塞物が疑われました。

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吐き気も続き状態の改善も認められなかったため、このまま試験開腹を実施していきました。

 

腹部にアプローチすると、胃の幽門部から十二指腸、空腸近位まで続く異物閉塞所見が確認でき、閉塞部腸管は重度に充血、膵臓は腫脹している状態でした。

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胃と空腸近位部に小切開を加え、大きな毛玉の塊を摘出しました。停滞していた消化管内容液は状態を悪化させる要因なるのでサクションにて吸引除去し、丁寧に単結紮にて縫合閉鎖しました。縫合した胃や腸管に漏れがないこと、出血がないことを確認し、定法通り閉腹し終了としました。

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術後は血圧が落ちないように管理し、腸管が破綻しないか注意してみていきます。術後2日目には元気が出てきて、3日目には少量ずつですが食べれるようになりました。一般状態、および血液の状態も快方に向かったため術後4日目に退院できました。

その後もスムーズに回復し、術後2週間での抜糸時には立派なうんちが出ているとのことでした。

 

本症例は吐き気の原因が胃~十二指腸部で閉塞した毛玉でした。血液検査の結果だけ判断してしまうと膵炎に対する長期的な内科治療を選択してしまい、閉塞状態が長く続き腸管が壊死してしまうリスクがありました。異物誤食の主訴がなくてもしっかり画像検査を実施し、総合的に診断していくことが重要ですね!!

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