乳腺腫瘍4

犬の多発性乳腺腫瘍

症例は9歳未避妊雌のウェルシュコーギーです。お腹にできものがあるとの主訴で来院されました。

身体検査にて、右側第5乳頭部にΦ2-2.5㎝大の腫瘤が1つ、左側第4乳頭部にΦ1㎝大の腫瘤が2つ認められました。針細胞診検査にて、異型性軽度~中等度の上皮系細胞集塊を採取しました。

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その他、各種臨床学的検査にて肺やリンパ節への明らかな転移所見は認められませんでした。

 

診断:多発性乳腺腫瘍

臨床的にはそこそこ大きいですし、細胞診では良性、悪性どちらともいえない所見がみられますので、早期にしっかり外科的に摘出することが奨められます。本症例は未避妊でもあったため、避妊手術(卵巣子宮摘出)とともに両側第3-5乳腺の領域切除を実施していきました。

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病理診断:多発性の複合乳腺腺腫、マージンクリアー

良性病変なので切除後の予後は良好です。残存する乳腺部に新たに腫瘤が発生する可能性はあるため定期的な身体検査は行っていきましょう。

 

犬の乳腺腫瘍は、良性悪性おおよそ1:1といわれていますが、小型犬25%より中・大型犬58%の方が悪性の割合が多いです。また、サイズが大きくなるにつれて悪性の割合も増えていきます。1㎝未満:1%以下、1~2㎝:7%、2~3㎝:18%、3~5㎝:45%、5㎝以上:57%です。悪性のものであったとしても転移がなく、しっかり血管の分布を考慮した領域切除を実施することで完治できることも多くあります。

早期発見・早期治療がとても重要ですね。胸やお腹のしこりを見つけたらいつでもお気軽にご相談ください。よろしくお願い致します。