犬と猫の眼科疾患の一つにぶどう膜炎があります。ぶどう膜とは、血管が豊富な組織である虹彩・毛様体・脈絡膜の総称をいいます。ここに色んな原因で炎症が起こります。
原発性のぶどう膜炎は自己免疫が関与していることが多いです。秋田犬で有名なぶどう膜-皮膚症候群(原田病)などがあげられますが比較的稀です。
ぶどう膜炎で臨床的に重要なものは続発性であり、全身性疾患からのものと眼科疾患からのものに分けられます。全身性疾患の代表的なものは、子宮蓄膿症などの強い炎症性疾患、高脂血症、FIPなどの特殊な感染性疾患、および腫瘍性疾患などがあげられます。そのためぶどう膜炎を見つけた際は全身精査をすることも考慮しなければなりません。ぶどう膜炎を続発する眼科疾患の代表的なものは、外傷性(鋭性-角膜潰瘍あり、鈍性-潰瘍なし)、水晶体起因性(白内障、水晶体破嚢)、緑内障、および眼内腫瘍などがあげられます。詳しく眼科検査を行う必要性があります。
ぶどう膜炎の診断は、スリットランプ検査で行います。所見としては、充血、羞明、縮瞳傾向、前房フレアなどが認められます。また、ぶどう膜炎の際は眼圧は低下する傾向がありますが、二次的に緑内障を発症し眼圧が上昇するケースもあるため注意が必要です。
(細隙灯顕微鏡-スリットランプ)
(前房フレアと縮瞳所見)
(猫の前房フレア)
(フィブリン塊の析出)
ぶどう膜炎は比較的よく遭遇する眼科疾患です。二次的なことがほとんどなので原因を突き止めてそこをしっかり治療しながらぶどう膜炎の管理も行っていくことが必要となります。
愛犬・愛猫ちゃんの眼に変わったことがあれば何でもお気軽にご相談ください。よろしくお願いいたします。
初めまして。愛知県に住む尾野と申します。突然すみません。猫の目の病気について調べていましたら、この記事に辿り着き、最後にお気軽にご相談下さいとありましたので、図々しいとは思いつつメールさせて頂きましたm(_ _)m 7年程前TNRした年齢不詳の雌猫が、その2年後にエイズを発症して保護しました。口内炎等の対処療法(抜歯や痛みの酷い時はステロイド注射や鎮痛剤服用)をしながら、更に3年後(今から2年程前)に腎臓疾患にもなり週に3日点滴を続けてます。1週間程前から目の様子がおかしく、オッドアイのように片目は赤っぽくなりもう片目は涙ポロポロで、かかりつけ医に相談したら結膜炎っぽいと言われました。たまたまその数日前に別の子が涙目で医師に診て貰い、ゲンタマイシンの目薬を頂いていたので、その目薬を使用して良いか伺ったところ、良いとの事だったのでその後毎日2回目薬してました。涙目は治り、赤目も少し良くなってきた気がするのですが…、昨晩、壁やソファー等にぶつかったりご飯や水の入った器の中も踏んづけて歩く姿を見ました…。昨日点滴通院時に相談したのですが、仕方ないとのことでした…。そうかもしれないですが諦めれずに足掻いています。多少回復したうえで進行を抑えることは出来ないのでしょうか?
長野様コメントありがとうございます。
愛猫ちゃんの眼が心配とのことですね。経過から推測する形にはなりますが、最も可能性が高いと思われることについて記載致します。急な物や壁にぶつかるという状態がありこれまで通常通り生活できていたのであれば、昨晩からの両眼の急な視覚消失ということが考えられます。腎不全持ちということを考えると腎性の高血圧からくる網膜症やぶどう膜炎により、視覚の喪失や眼内出血などの症状を起しているものと思われます。この場合、根本は高血圧という全身性疾患であり、眼の充血や出血などは二次的病態ですので、高血圧の治療(降圧剤の内服)をしないと改善しません。眼の治療としては消炎作用のあるステロイド系の点眼薬を使うことが多いです。ただ、治療をしたとしても視覚が戻るかどうかは症例により様々です。当院ブログの“猫の視覚消失”記事を参考にしてみると良いかもしれません。
あくまで本人の状態を診察したわけではありませんので一つの参考意見ととらえて下さい。何卒よろしくお願いいたします。