症例は9歳ポメラニアンです。
両側性の皮下陰睾が子供のころからあって、右側の睾丸がここ1年くらいで巨大化しているとのことで来院されました。身体検査にて、右側の精巣は大きさが4-5㎝大となっており、左側と比べ10倍近く大きくなっていました。
放っておくと局所的な浸潤や遠隔転移を起こす危険性があるため早めの摘出をすすめていきました。左右とも精巣は総鞘膜に包まれたまま摘出しました。
病理検査では、セルトリ細胞腫という精巣の腫瘍でした。完全切除されており、脈管内の浸潤もなしとの結果でした。念のための経過観察が必要ですが、予後は良好と考えられます。
潜在精巣(皮下および腹腔内)の睾丸は正常な精子形成が出来ず、さらに後々腫瘍化してしまう危険性を秘めています。予防的な去勢手術がなによりも大切になりますね。
気になることがあればいつでもご相談ください!!宜しくお願い致します。
突然のメールで大変失礼致します。
実家の愛犬(ポメラニアン12歳オス)も両側のセルトリ細胞腫になってしまい、不安で調べているうちに、こちらのブログに辿り着きました。返信を頂けると助かります。
1か月前に、全身麻酔で両側精巣を切除し、病理検査の結果、セルトリ細胞腫で左右とも脈管侵襲がありました。現時点では明らかな転移はありません。
転移を予防するため(?)に、抗がん剤点滴を受けたのですが、食欲.体重が低下し、白血球も5000程まで下がってしまいました。
明らかな転移もないのに、このまま抗がん剤治療を続ける必要が有るのか判断できずに悩んでいます。
お忙しいなか大変恐縮ですが、もしお時間がありましたら、先生のご意見を聞かせていただけないでしょうか。
よろしくお願いいたします。
こんにちは。コメントありがとうございます。
ご実家のわんちゃんもセルトリ細胞腫なのですね。お大事にしてください。
脈管内の浸潤がある場合はやはり今後どうしても再発するリスクがあるため、予防的な抗がん剤治療は奨めます。これは明らかに目に見えていなくても細胞レベルでがん細胞が存在する可能性があり、抗がん剤はその小さい状態に対して効果を発揮できるためと考えられます。ただ副作用が大きいようであればしっかり回復するまで抗がん剤は延期する、次回使う抗がん剤は減量または変更するなどの対処が必要になるでしょう。抗がん剤には大なり小なり副作用はあるもので、個体個体によって合うあわない、また薬の種類によって強いものマイルドなものなどが選択できます。しっかりとかかりつけさんとご相談し、納得したうえで治療を進めていってください。
本人の状態を診察したわけではないため、ひとつの参考ととらえて下さい。よろしくお願いいたします。