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猫の乳腺癌

症例は10歳の避妊済みのメインクーンです。避妊した時期は成猫になってからとのことでした。

乳腺が腫れて赤黒くなっているとのことで来院されました。身体検査にて左側の最後乳腺部に1.5-2cm大の皮下腫瘤が認められました。針細胞診検査にて、核異型の強い上皮系細胞集塊が多数採取されました。また、レントゲン検査や超音波検査を実施しましたが明らかな転移所見は認められませんでした。

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仮診断:乳腺癌

猫の乳腺癌は約80%が悪性であると言われており、予後の悪い腫瘍の一つです。小さくても転移を引き起こしていくリスクが高いため片側乳腺全摘出を行っていきます。

左の第1-4乳腺の全摘出術を実施しました。丁寧に血管を処理していき、腫瘤および鼠径リンパ節と一緒に摘出していきました。一番尾側の乳腺腫瘍を取るためにこれだけ広範囲で切除しなくてはいけません。

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病理検査:リンパ節転移を伴う乳腺癌(T1N1M0)

リンパ節は約60%が腫瘍細胞で置換されていました。この状態はステージ3/4の進行と判断され、平均の生存期間が6-9ヶ月となります。遠隔転移が確認されるとステージ4/4となり平均の生存期間は1ヶ月と判定されます。術後の再発・転移予防として、抗がん剤や消炎剤NSAIDsなどが挙げられます。

 

本症例は術後約1年、無処置で元気に過ごせましたが、最後は肺への転移が認められ逝去された症例です。術前レントゲン検査では黒くキレイに抜けてみえていた肺が白く不鮮明になっています。

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猫の乳腺腫瘍は発症すると怖い疾患一つですが、なんといっても若齢(1歳未満)での避妊手術により高い発生予防効果があることが分かっています。当院のスタッフが予防効果についてのPOPを作ってくれましたので是非ご一読ください。

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愛猫ちゃんに気になるできものを見つけたらいつでもご相談ください。よろしくお願い致します。