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犬の口腔内悪性黒色腫(上顎)

症例は17歳のミニチュアダックスフンドです。最近、食べたり食べなかったりで食欲が安定しないとのことで来院されました。

口腔内の検査より上顎歯肉より発生し、硬口蓋側にも約1/3程浸潤を認める不整型2-3cm大の黒色腫瘤を認めました。

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細胞診検査では、異型性中等度の円形核を持ち細胞質に黒色顆粒を認める細胞の集塊が多数観察されました。領域リンパ節(下顎リンパ節)の評価では明らかな腫瘍細胞の浸潤は認められませんでした。

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診断:口腔内悪性黒色腫(上顎)

口腔内の悪性腫瘍は進行すると局所的な問題が生じ、痛みや感染、炎症、物理的に大きくなることにより食べれなくなったり呼吸がしづらくなったりすることが多いです。黒色腫(メラノーマ)の場合進行が早く数ヶ月で命のリスクを及ぼすこともあります。本症例は17歳と高齢であり、慢性腎障害もちであったため麻酔リスクはありましたが、最大限の注意を払い外科的切除を実施していきました。

 

まずは転移の評価のために下顎リンパ節の切除を実施しました。その後、1㎝程のマージンを確保しつつ上顎骨部分切除により腫瘤の摘出を実施していきました。歯肉や粘膜の切除には電気メスを、上顎骨の切除にはラウンドバーを使用しました。

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切除後の内側に腫瘍の浸潤がないことを確認し、粘膜を2層で縫合しました。

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切除組織は病理検査にまわし、リンパ節や骨浸潤などの有無、マージン評価などをしてもらいます。

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術後の経過は順調で3日目には退院できました。

 

病理組織検査:口腔内悪性黒色腫:Oral Malignant Melanoma

腫瘤(28×18×15mm)は完全に切除されており、脈管内浸潤や上顎骨への浸潤は認められず、リンパ節への転移もありませんでした。

TNM分類としてはT2N0M0でステージ2と判定されます。報告では生存期間中央値8ヶ月と比較的良好な予後が期待されます。

 

本症例は自己免疫による腫瘍細胞の増殖抑制効果を期待し、“アニミューン”というサプリメントのみを継続して使用しました。術後10ヶ月経過しますが食事や飲水は問題なく出来ており、再発転移なく元気に生活できています。17才という高齢での手術ではありましたが、諦めず治療して本当に良かったと思います!!

変わったことがあればなんでもお気軽にご相談ください。よろしくお願いいたします。

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