症例は13才のミニチュアシュナウザーです。2週間前から右眼が充血しているとのことで来院されました。
眼科検査を詳しく実施したところ、視覚は消失し、眼内に強い炎症(ぶどう膜炎)と、超音波検査にて網膜剥離および眼底部の腫瘤性病変が確認されました。
〔右眼:網膜剥離あり/左眼:normal〕
〔右眼:眼底部腫瘤病変5~8mm大〕
臨床診断:眼底部の腫瘤、二次性ぶどう膜炎
眼底部(網膜や脈絡膜)に発生する腫瘤は犬では稀であるため、血餅などの非腫瘍性疾患も考慮し、まずはステロイドによる点眼と内服薬での治療を実施しました。数か月間経過をみていきましたが、改善はみられず眼内出血も認められるようになったため、外科的切除(眼球摘出)を実施していきました。
摘出した眼球の内部を確認したところ、網膜脈絡膜部に暗赤色の肉様腫瘤が認められました。
病理検査:脈絡膜発生の悪性黒色腫
犬の眼球に発生する悪性黒色腫は口腔や爪床部に発生するものと比較すると遠隔転移を来す可能性は低いと考えられていますが、本症例のように脈絡膜発生のメラノサイト由来腫瘍は稀であり(過去の報告では4%程度)、摘出後の挙動が分かっておらず注意が必要となります。
愛犬・愛猫ちゃんの眼に気になることがあればなんでもお気軽にご相談ください。よろしくお願いいたします。