症例は6歳のゴールデンドゥードゥルです。右眼に黒いできものがあるとの主訴で来院されました。
詳しく眼科検査をしたところ、虹彩-毛様体部から発生し、外側の強膜表面まで連続する黒色の肉様腫瘤が確認されました。視覚は維持されており、本人も特に気にしている様子はありませんでした。
臨床診断:ぶどう膜(=虹彩・毛様体)悪性黒色腫疑い
眼球に発生した黒色腫瘤で、確定診断および治療には外科的切除が必要になります。体表のリンパ節や肺、腹腔内への転移所見がないことを確認し、本症例は眼球摘出を実施していきました。
経結膜アプローチにて眼球周囲の筋肉や支持組織、視神経や血管を丁寧に切離していき、眼球丸ごと摘出します。瞬膜と眼瞼も残さず切除し、出来る限り陥没しずらいように並置縫合にて閉鎖しました。
術後の回復はスムーズで翌日より散歩も行け、食欲もあり、問題なく退院できました。
病理診断:眼球の悪性黒色腫(脈管内浸潤なし、マージンクリアー)
メラノサイト由来の悪性腫瘍です。口腔や爪床部に発生するメラノーマと比較すると遠隔転移を来す可能性は低いと考えられています。
術後約2年経ちますが再発・転移することなく元気に生活できています!!定期的な身体検査やレントゲン検査は実施していますが、術後の補助治療は何も行っていません。
犬の眼球に発生するメラノーマは比較的良い挙動を取ることが多いことが分かっています。他に転移していなければ早期に外科的切除をすることで完治の望める悪性腫瘍になります。多くの症例は視覚が残っていることが多く、摘出の判断を迷う飼い主様も多いと思います。しっかり獣医師と相談し、治療の方向性を決定していく必要があります。
愛犬・愛猫ちゃんの眼に気になるできものを見つけたら何でもご相談ください。