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猫の乳腺癌

症例は13歳の未避妊雌の三毛猫です。

胸のしこりが大きくなったとの主訴で来院されました。数年前からあり、半年前くらいから急に大きくなってきたとのことでした。

身体検査にて、右側第2乳頭付近に大きさ3㎝径の腫瘤が認められました。針細胞診検査にて、異型性軽~中等度の上皮系細胞集塊が確認できました。その他、臨床学的検査にて大きな異常はなく、明らかな転移所見も認められませんでした。

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臨床診断:猫の乳腺腫瘍、乳腺がん疑い(T2N0M0、ステージ2)

猫できる乳腺腫瘍は約80%は悪性腫瘍の乳腺がんであり、予後の悪い腫瘍の一つと知られています。腫瘍のサイズが強力な予後因子と考えられており、平均生存期間として2㎝以下のものは4.5年、2~3㎝のものは2年、3㎝以上のものは6か月という報告があります。正確な臨床ステージ評価を行うため、(転移)リンパ節の郭清を行うため、広範囲な外科的切除が推奨されます。

 

本症例も飼い主様と相談し、早期に右側乳腺全摘出と腋窩・副腋窩・鼠径リンパ節の切除を実施していきました。

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尾側にある鼠経リンパ節は第4乳腺を定法通り切除することで脂肪とともに一緒に切除できます。また腋窩・副腋窩リンパ節に関しても乳腺と一括で摘出する(=郭清)必要があります。そのためには、深胸筋と広背筋の間を走行する外胸動静脈と神経をランドマークとして脇の奥の方にアプローチしていきます。

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摘出後は皮下、皮膚を丁寧に閉鎖・縫合しました。摘出組織は病理検査を実施します。

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術後の回復はスムーズであり、手術翌日には退院できました。

 

病理診断:中~高度に異型性を示す乳腺癌、脈管内浸潤はなく、マージンクリアー、同時に摘出された腋窩・副腋窩・鼠経リンパ節に転移所見なし(T2N0M0)

 

猫の乳腺がんは局所浸潤性や転移性が高く、予後も悪い腫瘍です。本症例は大きめの腫瘤でしたが、幸いリンパ節への転移は認められませんでした。今後も要注意の経過観察が必要になりますが比較的良い予後が期待できます。

乳腺がんで大事なことは小さいうちに早期発見・早期治療することです。自宅で乳腺部(お腹全体)を定期的に触ってもらい、しこりをみつけたら早めに動物病院に相談してください。2㎝未満で見つけることが予後を大きく左右します!!

当院も参加させていただいているキャットリボン運動もご覧ください。分かりやすく詳しい情報や乳腺マッサージの方法など紹介されています。

URL:http://catribbon.jp

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