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犬の脾臓単発性血管肉腫

症例は9歳のミニチュアシュナウザーです。

昨日の夜から元気と食欲がいまいちとのことで来院されました。超音波検査にて、少量の腹水と脾臓に大きさ5-6㎝大の腫瘤を認めました。肝臓や心臓には異常所見は認められませんでした。

 

診断:脾臓腫瘤からの腹腔内出血

現状貧血などは起きていないため、お腹の中で出血し血圧が一時的に下がっていたことが予想されます。放っておくとまた腫瘤から出血しどんどん悪化しショック状態になるリスクもあるため、緊急的に外科手術を実施していきました。

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腹部正中切開にてアプローチし、腫大した脾臓と一部破裂し持続的に少量ずつ出血している腫瘤を確認しました。丁寧に脾臓に出入りする血管を処理し、腫瘤ごと切除しました。摘出後は明らかに血圧が安定しました。

術後の回復はスムーズで翌日には元気も食欲も元に戻り、退院できました。

 

病理診断:脾臓血管肉腫

脾臓血管肉腫は予後の悪い腫瘍の一つです。教科書的には、外科的摘出のみでは生存期間の中央値が1-3ヶ月、色々な術後補助治療を行っても1年生存率は10%未満とされています。

 

本症例は、補助治療として抗ガン剤(カルボプラチン、ドキソルビシンなど)、NSAIDs、サプリメントを使用し、約2年間元気に生活することができました。

やはり最後は腹壁や大網に再発し再度出血をしたり、けいれん発作など脳への転移が疑われる症状もありました。

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脾臓にできる腫瘍で腹腔内出血をしている症例の70%が悪性腫瘍と言われ、さらにその悪性腫瘍の90%が血管肉腫であるという報告もあります。出血している腫瘍は良くないことが多いです。なかなかこの診断がくだると今の獣医療においては良いお話はできないことが多いです。

本症例は脾臓腫瘤からの出血が少量であったことや、単発性であったこと、術後の補助治療を積極的に行えたこと、そして何より患犬ちゃんの強い生命力と飼い主様のお力添えがあったことで血管肉腫では考えられないくらい長い生存期間を得ることができました。一緒に治療ができて誇りに思いますし、今後の診療にとても力になります。

 

これからも日々精進し、少しでもたくさんのわんちゃんねこちゃんの助けになれるよう頑張っていきたいと思います。気になることがあれば何でもお気軽にご相談ください。よろしくお願いいたします!!