症例は14歳のミニチュアピンシャーです。健康診断での血液検査にて肝酵素の顕著な上昇を認め肝障害を起していました。2週間の内科治療に反応認めず、超音波検査を実施したところ、胆嚢内容物の重度変性を認め、胆嚢粘液嚢腫が疑われました。
犬の胆嚢粘液嚢腫は、ムチンを含むゼラチン様粘液が蓄積し胆嚢や胆管内に充満することで、閉塞性黄疸や胆嚢炎、胆道系の壊死などを引き起こす疾患です。基礎疾患として、甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症が関与していることが知られています。また、後発犬種としてシェルティやコッカ-スパニエル、ミニチュアシュナウザー、柴などが挙げられます。
本症例は胆嚢の拡張も重度であったため早期に外科的胆嚢摘出を実施していきました。
上腹部にアプローチし、肝臓および胆嚢を確認します。肝臓に張り付いて存在する胆嚢を丁寧に剥離して露出していきます。胆嚢内容物を除去し、総胆管の開通を生理食塩水でフラッシュすることで確認し、胆嚢を切除していきました。肝臓を一部生検し、出血がないことを確認し閉腹しました。
術後もスムーズに回復し、3日目には退院できました。
病理検査:胆嚢粘液嚢腫、肝臓グリコーゲン変性、リンパ形質細胞性胆嚢炎および胆管周囲炎
胆嚢粘液嚢腫は、胆嚢閉塞による黄疸や胆嚢破裂が疑われた犬に施される緊急摘出術に比べ、症状がないうちに手術を実施する予防的摘出術の方が予後は良好であることが分かっています。そのため、腹部超音波検査にて胆嚢粘液嚢腫の所見が得られた場合には早期に手術を検討することが推奨されます。
本症例は胆嚢粘液嚢腫の原因に腫瘍性変化は認められませんでしたので予後は良好です。
愛犬・愛猫ちゃんに変わったことがあればいつでもご相談ください。よろしくお願いいたします。