DSC00821

犬の気管虚脱

症例は10歳去勢雄のトイプードルです。夜中に咳がひどくなり止まらなくなったとのことで来院されました。

身体検査にて頚部の軽い圧迫によりガチョウ様の咳が誘発される状態でした。舌色や呼吸の状態は落ち着いていました。レントゲン検査にて、吸気・呼気ともに重度の気管扁平化が認められました。心臓や肺はキレイに確認されました。

siara1  siara2 siara21

診断:気管虚脱

気管は咽・喉頭から肺までの空気の通り道で、犬の気管は35-45コのU型の気管軟骨できた気管輪を弾力性のある輪状靱帯で連結したパイプ(管状)のような構造をしています。気管虚脱とは、この気管が押しつぶされたように変形し、咳や呼吸困難を呈し、パンティングによる体温調節に障害をきたす疾患です。はっきりとした原因は不明ですが、遺伝的要因が示唆されており、小型犬(ポメラニアン、トイプードル、ヨークシャー・テリアなど)の中高齢に多く認められます。

治療には、姑息的ではありますが内科治療により咳の症状を安定化させる方法と、潰れた気管を根本的に治す外科治療があります。本症例は飼い主さまと相談し、気管外プロテーゼ(PLLP)を用いた外科的整復を実施していきました。

 

使用したPLLPです。光ファイバーを特殊な形状にしてあります。

DSC00807  DSC00808

気管を露出させます。周りの血管や神経を傷つけないように注意しながらひしゃげた気管の状態を確認します。

DSC00790  DSC00792

気管の周囲にPLLPを設置し、細かい糸で縫合していきます。側面から見るときれいに円筒状に矯正されているのが確認できます。

DSC00793  DSC00798  DSC00799

丁寧に閉創して終了としました。

DSC00800

 

術後約1ヶ月、症状はほぼなく、薬もなしで元気に生活できています。レントゲン検査では、空気の通り道(=気管)がしっかり確保されていることが確認できます。

siara9 siara91

DSC00821

 

今回の症例は小型犬に多い気管虚脱の症例でした。獣医療の発展により外科的整復で完治を望める病気になりました。内科治療でも咳の緩和はできますが、なかなかコントロールできない症例は手術を検討することも必要となります。

愛犬・愛猫ちゃんに咳の症状があればなんでもご相談ください。よろしくお願いいたします。