症例は4歳のトイプードルです。以前から右眼の涙が多く、しょぼしょぼすることがあるとのことで来院されました。
眼科検査を実施しました。フルオレセイン染色にて角膜の点状陽性所見が認められ、スリットランプ検査にて角膜の血管新生および白濁変性所見が認められました。また、角膜の潰瘍部と一致して眼瞼の内側に太めの睫毛が生えていました。
診断:睫毛重生、二次性角膜潰瘍・慢性角膜炎
睫毛が通常の場所より内側に生えており、それが慢性的に角膜を刺激し、傷を作ったり炎症を起したりします。本症例は、角膜へ血管が伸びており慢性経過をたどっていることが示唆されます。角膜は通常血管の無い透明な組織で、傷の治りが悪い場合、受傷5日後から血管新生が起きてきます。血管新生のスピードは1日あたりおよそ0.5-1mmと言われています。
本症例は異常な睫毛を抜いて、抗生剤とヒアルロン酸の点眼薬で治療を進めていきました。1ヶ月後に病院に来た際に、眼の状態はすごく良くなったとのお言葉を頂き、ずっと続いていた涙も出なくなっていました。
今回の角膜潰瘍の原因は、睫毛の異常からくるものでした。治らないものには何らかの原因が隠れています。最初にしっかりそれを診断し治療できたことで角膜の傷はスムーズに治癒していきました。
愛犬・愛猫ちゃんの眼に変わったことがあれば何でもご相談下さい。よろしくお願い致します。