”血管肉腫”は高齢の大型犬に比較的多く発生する悪性腫瘍です。血管内皮由来の腫瘍で、発生の多くは脾臓で、その他肝臓や心臓、脾臓や肺などにも認められることがあります。
脾臓のできものは約半数が血腫や過形成といった良性の病変であり、残りの半数が悪性腫瘍でそのうちの6割くらいが血管肉腫であると言われています。脾臓のできものは良性であれ悪性であれ、急に破裂してお腹の中で大量出血をするリスクがあります。そのため、まずは破裂する前に脾臓ごと摘出し、病理検査による確定診断そして治療方針の決定につなげていきます。
写真は大型犬の脾臓に発生した血管肉腫です。最大7㎝の腫瘤が３つ確認されました。一部には大網という膜が癒着し何度か破裂し出血を起こしていたことが推測されます。単発性なのか多発性なのか、摘出時に破裂を起こしているかどうかなど今後の予後を多少左右するようです。基本的に病理検査にて血管肉腫と診断された場合予後は極めて悪いです。摘出手術のみでは数か月、術後に抗がん剤などの化学療法を行っても半年ほどと言われており、教科書的な術後の1年生存率は10％以下となります。
現段階の獣医療では生存期間の延長はいくらか期待できますが、再発や転移を完全に抑えられるわけではありません。よって術後の治療方針はご家族としっかり相談したうえで決めていくことが重要となります。なかなか難しい腫瘍の一つですが、愛犬・ご家族が少しでも笑顔で過ごせるよう全力でサポートさせていただきます。
愛犬愛猫ちゃんに変わったことがあればいつでもご相談ください。よろしくお願いいたします。