症例は13歳のMix犬です。1週間前あたりから眼が赤くなってきて、少しとびだしてきた気がするとのことで来院されました。
眼科特殊検査にて、右眼の視覚消失、眼内の炎症所見(ぶどう膜炎)、眼圧の顕著な上昇(74-77mmHg)、眼球腫大所見が認められました。眼の超音波検査にて水晶体の混濁および一部破裂が認められ、水晶体起因性ぶどう膜炎からの続発的な緑内障が考えられました。左眼はしっかり見えており正常でした。
(右)
(左)
診断:白内障、水晶体起因性ぶどう膜炎、続発性緑内障
数日間の内科治療を行いましたが、眼圧は40~65mmHgまでしか下がらず(正常は20mmHg以下)、視覚の回復も難しい状況でした。このまま放置すると痛みや炎症が続くだけでなく、眼がどんどん大きくなってしまい(牛眼)、二次的な角膜の損傷や最終的には眼球が萎縮してしまうことが予想されました。それらの二次的傷害やストレスから解放するためにシリコンボール義眼挿入術(ISP)を実施していきました。
ISPは眼球を完全に取り除くのではなく、角膜や強膜・結膜といった外側の膜を残します。眼内の組織である虹彩・毛様体・脈絡膜・網膜・水晶体・ガラス体といったものを除去し、残った外側の袋の中にシリコンボールを挿入します。そのため、ぱっと見では眼が普通にあるように見え、美容的面でもメリットの大きい手術となります。本症例は17mm径のシリコンボールを挿入しました。
(術直後)
(摘出した眼内組織)
入院は1泊で退院できました。術後はエリザベスカラーを着用し、抗生物質やヒアルロン酸の点眼を使用して眼の保護を行っていきます。
(術後3-4週間)一時的に赤みが目立つ時期があります。
(術後2-3ヶ月)だいぶなじんで黒っぽくなってきます。ここまでくると点眼もほとんど必要なくなります。
本症例は外科手処置をすることで緑内障のストレスから解放できました。これからも元気に生活できるようにサポートしていきます。
愛犬・愛猫ちゃんの眼のトラブルがあればいつでもご相談ください!!よろしくお願い致します。
突然すみません
犬の眼について調べていてこちらを拝見させていただきました
義眼挿入術後3〜4週のお写真なのですが
白くなっていて赤い血管?か見えますが
これは何故こういう風になるのですか?また
術後2〜3ヶ月の写真では ほぼ左右 変わりなく見えますが だいたいこのような術後経過をたどりますか?
こんにちは。義眼挿入後の経過は多くはこのような経過をとります。一時的な白濁や血管新生は詳しくは分かりませんが、短期的な異物免疫反応や、角膜内皮とシリコン義眼の接着による反応と考えられています。
気になることがあればなんでもご相談ください。よろしくお願いいたします。
お忙しい中ありがとうございます!
白濁と血管は一時的なものなのですね
白濁(眼の表面が白くなる)はそのままになるのかと思っていましたが
数ヶ月で取れていくのですか? 白いままの子と黒っぽくなる子がいるのかなとか考えてました
義眼挿入術後の最終的な色に関しては症例それぞれで予測は難しいです。
少し白っぽくグレーになることもあるし、キレイに黒っぽくなる子もいます。
緑内障は最終的に牛眼になったり、萎縮して小眼球になることを考えると、美容的な面や疼痛などのストレスから解放されますので選択肢の一つとしても良いのではないでしょうか。
よろしくお願いいたします。
突然のコメント申し訳ありません。
犬が白内障手術後、緑内障になってしまいました。
シャント手術を勧められているのですが、手術をされた方からは複数回手術を繰り返すと伺い、なおかつ最後まで視力が維持できるんけではないと伺い、手術を繰り返す苦痛を選択すべきか悩んでいます。
ちなみに片目は白内障気味ですが見えています。
シャント手術の予後というのは実際どのような状況なのでしょうか?
突然すみません。
愛犬は、目に腫瘍が出来て眼球摘出を進められました。てんかんの持病をもっていますが手術は大丈夫ですか?
義眼だと手術費用は高いですか?
シェリ様、コメントありがとうございます。眼球に腫瘍ができた場合、基本的には眼球摘出が奨められます。なぜなら腫瘍が悪性の場合、眼球を残す義眼手術は腫瘍が再発するリスクがあるからです。発生している腫瘍が茶色や黒色であればなおさら悪性黒色腫の可能性が高いです(眼球に発生する腫瘍で最も多いです)。てんかんの持病と麻酔・手術に関しては、かかりつけの先生としっかり相談して下さい。一般的にてんかんの症状が内服薬でコントロールされていれば大きなリスク要因にはならないと考えられます。
本人を直接診察したわけではありませんので一つの参考意見ととらえてください。早く愛犬ちゃんの眼が良くなることを願っております。何卒よろしくお願いいたします。
我が家のシュナウザーは緑内障で眼圧が37です40過ぎたら義眼手術をすることになりますと言われ11歳と言う事もあり悩んでいます!点眼薬では、維持していけないのでしょうか
ピーマン様、コメントありがとうございます。当院の緑内に対する義眼の適応は、視覚を消失してしまい点眼(眼圧を下げるお薬は何種類かあります)をしても眼圧がコントロールされず痛みを伴っている、あるいは眼球腫大(牛眼)がおき眼に外的障害を起す可能性がある、などの眼に対して行なっています。
直接診たわけではないのではっきり言えないですが、見えている目に対しては眼圧をコントロールすべく複数の点眼薬を組み合わせて維持を試みることが多いです。また、点眼でコントロール出来ない場合は前房シャントなどの眼圧を下げるための外科的処置を検討することがあります。視覚がない眼に対しては、考え方次第で、痛みからの解放を目的に早めに義眼を適応する獣医さんもいると思います。かかりつけさんとしっかり相談し今の眼の状態を把握して最適な治療を検討してあげて下さい。
愛犬ちゃんの健康を願っております。あくまで一つの参考意見ととらえて下さい。何卒よろしくお願いいたします。
こんにちわ。網膜剥離から硝子体手術しましたが、左目が眼圧あがり、点眼で眼圧を下げる努力してますが、牛目の状態になってきています。牛目になり始めた時点ですでに視力は出ていないと考えるのが一般的でしょうか?以前先生は光を感じれてるかどうかくらいといっていましたが、眼圧40あたりではすでに失目してると考えるが一般的でしょうか?
また牛目になりかかりの場合は、パルスレーザーで眼圧さげるより再発考えれば、シリコンで痛みや炎症を回復させてあげることが自然でしょうか?
いとう様、コメントありがとうございます。手術をした左眼が緑内障になっているとのことですね。一般的に牛眼の状態は、眼圧が上がっている状態(緑内障)が慢性的に続いていることで徐々に眼が大きくなっていきますので、視覚は消失していることが多いと考えられます。眼圧の数値だけで見えているか見えていないかは判断できませんが、例えば右眼を手で塞いだ状態で左眼の前に手をぱっとかざしてみて瞬きをするかどうか(威嚇反射)、強い光を当てて眩しくて瞬きをするかどうか(眩目反射)、などの検査をして視覚があるかどうか、神経の反射が生きているかどうかを判断していきます。
牛眼になった眼に対しては、基本的に視覚がなければシリコンボール義眼挿入術が推奨されると思います。ただ、牛眼でも(視覚はないかもしれませんが)眼圧がコントロールされ痛みを生じていなければ点眼での維持が出来るかもしれません。お考えの通り、眼圧がコントロールできず、麻酔をかけて手術を検討しているのであればレーザーでの一時的な対処より、シリコンボールによる手術が痛みや炎症からの解放につながるため根本解決となると思われます。
あくまで直接診察をしているわけではありませんので、一つの参考意見ととらえて下さい。しっかりかかりつけさんと相談することが大切だと思います。愛犬ちゃんの治療がうまくいくことを願っております。何卒よろしくお願いいたします。
ご丁寧に説明くださり、温かい言葉ありがとうございます。
度々すいません。色々点眼しましたが眼圧42から下がりません。42は痛みはあると考えていいのでしょうか?先生は痛そうじゃないねと言われました。
追加の経過ありがとうございます。慢性化している眼なので痛みに対して慣れてしまっている可能性があり、眼圧の数値だけでは判断難しいと思いますが、痛みの症状として充血(白目が赤い)や羞明(しょぼつき)、本人が気にして手で掻いたり床でこすったりなどが挙げられます。自宅で生活しててそういう症状がなければ多少眼圧が高めでも点眼で経過をみることはありますが、シリコンボールの手術を行った症例の中には以前よりすごく活発になったと感じられる飼い主様もいるようです。
かかりつけ医さんとしっかり相談して治療方針を検討してあげてください。よろしくお願いいたします。