症例は11歳のラブラドールレトリバーです。
舌にできものがあり、痛がったり、食欲が落ちてきたり、臭うようになってきたとのことで来院されました。舌を観察すると、表面には凸凹した腫瘤と潰瘍病変が認められ、裏側はひどくえぐれて出血している所見が認められました。
(表面)
(裏面)
状況的にかなり痛みも強くQOLの低下が大きいため、舌の切除を行っていきました。幸い血液検査やレントゲン、超音波検査では異常所見はありませんでした。腫瘤を取り残さないように舌の約2/3を切除していきました。
術後の回復は良好で、元気食欲とも問題なく手術の次の日には退院できました。
病理検査結果は、舌の扁平上皮癌という悪性の腫瘍でした。切除マージンには腫瘍の増殖像は認められませんでしたが、脈管内に遊離する腫瘍細胞が認められるため再発や転移に注意が必要となります。
本症例は飼い主様との相談の上、術後に予防的な抗がん剤治療を実施しています。カルボプラチンというお薬を1ヶ月毎に計5回投与しました。現状、再発や転移もなく元気に生活できています。
舌がなくなることのデメリットとして、よだれがこぼれてしまうことや、飲水や摂食に不自由が出ますので自宅での飼い主様の協力が必要不可欠になります。はじめは慣れるまで大変でしたが、今では上手に自分で飲んだり食べたり出来ているとのことです。
わんちゃんの適応力はすごいですね!!
変わったことがあればいつでもご相談ください。よろしくお願いいたします。