DSC00679

犬の皮膚型リンパ腫

症例は14歳のMix犬(チワワ×ミニチュアダックスフンド)の症例です。背中にフケが出てて赤い、ヨダレが大量に出てくるとの主訴で来院されました。

身体検査にてよく観察すると、鼻鏡、口唇周囲、四肢の肉球で色素が抜けている状態を認めました。背部には広範囲の鱗屑を伴う発赤が確認されました。通常の皮膚炎では認められない、色素脱と紅皮症が疑われました。

DSC00679 DSC00680 DSC00686

DSC00681 DSC00682 DSC00685

DSC00687 DSC00688 DSC00689

飼い主様にご提供いただいた過去の写真と見比べてみると皮膚の状態がおかしいことがはっきり確認できます。

じゅじゅ1 じゅじゅ2

皮膚病変の確定診断をするために、局所麻酔下にて皮膚生検を実施しました。病理検査では、表皮内に多数の小型リンパ球が浸潤しており、上皮向性リンパ腫が第一に疑われるとの結果でした。

 

診断:上皮向性リンパ腫(小細胞性)

犬の皮膚型リンパ腫の多くは、表皮と真皮を合わせた上皮と呼ばれる場所に腫瘍細胞であるリンパ球が浸潤して、特徴的な皮膚症状を示します。“紅皮症”は、広範囲の皮膚にフケ(鱗屑)と赤み(紅斑)を伴う病変です。“色素脱”は、通常メラニン色素が存在し黒色を示す部位が白っぽくなることを言います。進行すると皮膚に“びらんや潰瘍”を起こしたり、“結節や腫瘤”をつくったりします。

病期は、限局期→全身性緩徐進行期→全身性急速進行期(結節期・腫瘍期)と進んでいきます。どの時点で発見され治療出来るかによって予後には差がでますが、生存期間の中央値(≒平均値)は6か月程度といわれています。

治療はリンパ腫ですので抗がん剤が主体となっていきますが、病期に合わせてマイルドなものから開始し、腫瘤形成など進行した病期では多剤併用抗がん剤やロムスチンといったハードなものを考慮していきます。また、かゆみを伴うことも多いためステロイドやオクラシチニブなどの痒み止めを併用することも検討します。

 

本症例は病理の結果および全身性緩徐進行期にあることを考慮し、リンパ系悪性腫瘍に対し抗腫瘍効果の強いL-アスパラギナーゼという注射で導入し、クロラムブシルというマイルドな抗がん剤とステロイドを使用しながら経過をみていきました。

〔治療開始10日〕背部の病変は消失し、鼻や肉球の色素脱も一部良化しました。

DSC00756 DSC00759 DSC00757

DSC00760 DSC00763 DSC00764

〔3か月〕色素脱病変は一部残りますが範囲の縮小が認められました。

DSC00842 DSC00843 DSC00840

〔6か月〕維持病変です。

DSC00895 DSC00896

DSC00921 DSC00924

 

皮膚型リンパ腫はそこまで多い疾患ではないため、治らない皮膚病を丁寧に診察し特徴的な皮疹がないか確認することが大事です。また、完治する病気ではないため、病期に合わせて治療を選択し、進行予防に努めていくことが生存期間の延長につながると思われます。そして何よりがん治療は早期発見・早期治療が大切です。

愛犬・愛猫ちゃんに気になることがあればなんでもお気軽にご相談ください!!よろしくお願いいたします。