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猫の子宮蓄膿症

症例は4歳未避妊雌のラガマフィンです。食欲と元気がなく吐いているとのことで来院されました。暖かい時期になり発情行動を何度も繰り返していた経過があります。

身体検査にて、陰部周囲に黄色液状物の付着を認め、顕微鏡で観察すると細菌(球菌)と炎症の指標である好中球が認められました。血液検査には大きな異常所見は認められませんでしたが、超音波検査では子宮の顕著な拡張、内腔の不整が認められました。

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臨床診断:子宮蓄膿症

子宮蓄膿症は、子宮内膜の嚢胞性増殖をともない、細菌感染による炎症から子宮腔内に膿汁が貯留する疾患です。発症には黄体ホルモンの分泌が深くかかわっており、犬では発情出血開始から1-2か月後の黄体期に発症することが多いです。それに対して、猫は交尾排卵動物であり黄体期の機会が少ないため、本疾患の発症は犬より低頻度です。不妊交尾後や、自然排卵する猫も知られてきており、その黄体期に発症するものと考えられています。また、犬では高齢期に多い疾患ですが、猫では比較的若齢気で発症することが多いのも特徴的です。

 

本症例は翌日、卵巣と蓄膿子宮の摘出を実施していきました。子宮は重度に拡張し、中には細菌感染を伴う大量の膿が溜まっていました。左の卵巣には水疱(卵胞)が形成されていました。周囲から出入りする血管を丁寧に結紮処理し摘出しました。

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麻酔の覚醒は良好で回復もスムーズでした。術後2日で退院し、食欲元気とも順調に改善していきました。

 

猫ちゃんは子宮蓄膿症にかかるリスクは犬に比べ少ないですが、外に出なくても(交尾をしなくても)発症することはあることを知っておかなければなりません。全身的な重度の細菌感染症なので治療が遅れると命にかかわることもあります。予防は早期の避妊手術になります。避妊手術が済んでいれば100%かかることはありません。

愛犬・愛猫ちゃんに変わったことがあればいつでもご相談ください。よろしくお願いいたします。