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犬のレッグ・ペルテス病

症例は8か月のトイプードルです。ここ数日右後ろ足をずっとかばって歩いているとの主訴で来院されました。

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身体検査にて、右後肢の跛行、筋肉の萎縮、および股関節領域にて可動性が低く痛みを伴っている様子が確認できました。レントゲン検査にて、右大腿骨骨頭部の変形、および股関節亜脱臼が認められました。画像の向かって左側が患者さんの右後肢です。反対側と比較して骨頭がいびつな形に変形し、ひびが入っているようにも見えます。

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診断:右後肢大腿骨頭壊死症(レッグ・ペルテス病)

 

レッグ・ペルテス病は大腿骨頭の骨端軟骨(成長板)が閉鎖していない若齢動物に生じる、非炎症性無菌性壊死です。トイプードルなどの小型犬に多く、ホルモンの影響や遺伝的因子、解剖学的形態などが原因と考えられています。大腿骨頭の血流が阻害される結果、骨端の崩壊が生じることになります。症状は急性~徐々に悪化する負重性跛行(かばって足を着かなくなる)です。放っておくと完全に足を使わなくなり筋肉が萎縮してしまい、最悪の場合は歩けなくなるこもあります。治療は骨の変形・壊死が起こっている大腿骨頭を切除することです(大腿骨頭切除術;FHO)。骨頭を切除することで股関節の構造は無くなりますが、周りの筋肉や支持組織が偽関節を形成していきます。痛みから解放され徐々に足を使うようになり、日常生活は問題なく過ごせるようになっていきます。

 

本症例も数日間の内科治療に反応が乏しかったため、大腿骨頭切除を実施していきました。

股関節にアプローチするためにゲルピー開創器を用いて筋肉を牽引し視野を確保します。関節包を切開し、大腿骨頭を露出し、切除ラインを決定していきます。骨ノミとマレット(ハンマー)にて少しずつ切除していきました。切除端が骨の髄質まで到達していること、屈伸運動にて切除骨端が寛骨臼にぶつからないことを確認して終了としました。画像と同様に骨頭にはひびが入っていることが確認できます。

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〔術前〕

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〔術後〕

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術後は内服薬を使用し痛みを和らげながら自力で足を使ってもらうよう促します。本症例は初めの筋肉の萎縮が大きく、スムーズに歩けるようになるまで半年ほどかかりました。小型犬で体が軽いのもあり3本足での生活に慣れてしまっていたのもあると思います。手術から約2年経つ今では、筋肉量もしっかりしており、元気いっぱい何の違和感もなく生活できています。

愛犬・愛猫ちゃんの歩き方に変わったことがあればいつでもご相談ください。よろしくお願いいたします。