症例は11歳のジャックラッセルテリアです。
散歩でボール投げをしててこけてしまいその後からずっと着地出来ず、3本足で歩いているとのことで来院されました。
ひとまずは内科的に消炎剤の内服と、安静を指示し経過を見てみました。
しかし、4-5日経っても良くなりません。詳しく触診、レントゲン検査を実施していきました。触診にて膝がガクガク動揺している所見(ドローアーサイン)、レントゲンにて脛骨が前方へ変位している所見が認められました。
診断:左後肢の前十字靱帯断裂
前十字靱帯は簡単に言うと大腿骨と下腿骨をつないでいる靱帯で、後十字靱帯と膝蓋靱帯とともに作用することで足が正常に動くようになっています。そのため前十字靱帯が切れてしまうとこのバランスが崩れてしまい、歩けなくなってしまいます。もちろん組織が切れているので強い痛みや炎症を伴います。治療は人工靱帯を用いて、靱帯再建の手術となります。
本症例も全身麻酔科にて前十字靱帯断裂整復を行っていきました。
膝関節包内にアプローチし、切れている前十字靱帯を確認し、除去していきます。
半月板に損傷がないことを確認し、人工靱帯を設置していきます。人工靱帯を大腿骨外側にある種子骨に掛け、脛骨粗面にドリルで開けた穴に通し、結紮していきます。周囲の組織、皮膚を縫合し手術終了です。
約1ヶ月間はバンテージによる外固定を行います。運動制限は約3ヶ月を目安にしています。
術後2ヶ月経ったころにはびっこひくことなくしっかり歩けてます。ジャックラッセルテリアなど運動量の激しいわんちゃんはふとした拍子に靱帯が切れてしまうことは多いです。わんちゃんも激しい運動をする前に準備運動が必要なんですかね….。
変わったことがあればお気軽にご相談ください!よろしくお願いいたします。
ブログを拝見させていただきました。
うちの犬も前十字靭帯損傷と診断されましたがまだレントゲンなどは撮っていません。
14歳と高齢です。
もし手術となったら高齢ですが手術しても大丈夫なのでしょうか?
不安で仕方ありません。
コメントありがとうございます。レントゲン検査は診断のためのひとつのツールです。症状や触診による所見(ドローアーサインやティビアルテスト)があれば診断はできると思います。跛行の症状が続いているのであれば手術は検討されると思います。ただ高齢でもあるため、手術前の検査(血液検査やレントゲン検査、超音波検査など)はしっかり実施し、他に異常がないか・身体が麻酔に耐えられるのかを判断することが大事だと思います。かかりつけの獣医さんとしっかり相談し治療方針を決めてあげてください。あくまで本人の状態を診察したわけではありませんので一つの参考意見としてください。
愛犬ちゃんの健康を心より願っております。何卒よろしくお願いいたします。