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犬の肛門周囲腺腫

症例は9歳未避妊雌のウェルシュコーギーです。お尻にできものがあるとの主訴で来院されました。

身体検査にて、肛門背側の皮膚に大きさ1.5㎝大の腫瘤が認められました。細胞診検査にて、肝細胞様細胞がシート状に採取されました。異型性は認められませんでした。

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肛門周囲線種1 肛門周囲線種2

診断:肛門周囲腺腫

肛門周囲腺は別名“肝様腺”ともいわれ、腺細胞の形態が肝細胞に類似することに由来します。細胞診にて異型性のない肝様細胞がたくさんとれてきたということは肛門周囲腺腫と診断されます。肛門周囲腺腫は肛門周囲腺由来の良性腫瘍で未去勢雄の犬によくみられます。雌にも発生はあるものの、その頻度は雄の1/3程度といわれています。肛門周囲での発生が多いものの、尾、大腿部、包皮などにも発生することがあります。

なお、猫では肛門周囲腺をもたないため、本腫瘍は発生しません。

 

治療は外科的切除となります。雄の場合はアンドロジェン(男性ホルモン)依存性が強く示唆されているため、腫瘤の摘出と同時に去勢手術が推奨されます。本症例は雌なので腫瘤の切除を実施していきました。

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病理診断:肛門周囲腺腫、マージンクリアー、浸潤(ー)

悪性所見は認められないため予後は良好ですが、同様の病変が新たに発生することがありますので、念のための定期健診は必要です。

 

肛門周囲は解剖学的な制限があるため腫瘤が大きくなりすぎると摘出が難しくなってきます。小さいうちに発見・診断し、早期に外科切除することが推奨されます!!お尻まわりの気になるできものを見つけたらいつでもお気軽にご相談ください。よろしくお願いいたします。