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犬の口腔内悪性黒色腫(メラノーマ)

症例は9歳の避妊済み♀の柴犬です。口の中にできものがあるとのことで来院されました。

身体検査にて上顎犬歯部の歯肉に大きさ約1cm大の黒いドーム状腫瘤が認められました。細胞診検査にて多数のメラニン顆粒が検出されました。また、各種臨床検査にて、明らかな転移所見は認められませんでした。

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診断:口腔内メラノーマ(T1M0N0)

口腔内に発生する黒色腫はすべて悪性と定義されており、局所浸潤性および転移率(リンパ節や肺)が高いことが知られています。治療の局所的な外科的切除が第一で可能であれば1cm以上のマージンを確保します。リンパ節転移や遠隔転移がなければ根治的な治療となります。最近の研究では2cm以上の腫瘍の場合では顕微鏡的なレベルでの転移が高頻度で起こっているといわれています。

 

本症例は腫瘤のサイズが2cm未満であり、明らかな転移がないため根治的治療が望める可能性があるため、早期に外科的切除を実施していきました。切除範囲は飼い主さまと相談し、腫瘍がある歯肉部、犬歯と前臼歯1本、およびその歯が位置する顎骨を一緒に切除することとしました。

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正常と思われる組織を5mm程確保し切除しました。歯肉と下顎の粘膜を縫合し終了としました。

病理検査結果:口腔内悪性黒色腫(メラノーマ)、高悪性度、腫瘍細胞の脈管内浸潤なし、切除マージンクリアー

(術前)

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(術後)

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術後の回復は良好で、翌日には退院し、3日目辺りからフードもしっかり食べられるようになりました。

 

術後2ヶ月の口腔内の状態です。キレイに治癒しています。

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術後1年半、元気いっぱい再発なく過ごせています!!

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口腔内悪性黒色腫は、局所の浸潤性やリンパ節や肺などの遠隔臓器への転移性が高い腫瘍です。口の中という隠れた場所であり、発見が遅れて進行している状態の症例も多いです。本症例は飼い主さまの注意深い観察により、2cm未満の比較的小さいうちに完全切除され、完治を望める対応を早期におこなうことができました。今後も触診やレントゲン検査などを定期的に行っていきます。

変わったことがあればいつでもご相談ください。よろしくお願いいたします!!