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犬の難治性角膜上皮びらん(外科対応)

症例は8歳のトイプードルです。右眼がしょぼついて腫れているとの主訴で来院されました。

初診時の眼科検査にて、右眼に角膜潰瘍が認められ点眼薬の治療をしましたが、1週間後の再診察時にもしょぼつきがあり全く治癒しておりませんでした。点眼麻酔後デブライドを実施すると角膜上皮の欠損部が顕著に拡大されました。

診断:難治性角膜上皮びらん(SCCEDs)

しっかりデブライドし、剥がせる上皮を除去していきます。その後数日間は点眼治療を実施しました。

 

再診時には少しよさそうとの印象で上皮は表面を覆っていましたが、接着が不十分で実質から浮いている状態で簡単に剥がれてしまいます。この場合は外科的な処置が必要となります。

まず角膜上皮の欠損部をしっかり把握するため綿棒にてデブライドします。

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その後欠損部よりも一回り広い範囲まで角膜実質に格子状に切開を加え、細胞の足場を形成していきます。

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最後に外界と遮断し表面を保護する目的に瞬膜を被せておきます(瞬膜フラップ)。

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術後10日ほどで被せておいた瞬膜を外してみます。角膜上皮はしっかり実質に接着し剥がれない状態でした。さらに治癒を促進するために自己血清を添加したヒアルロン酸点眼をつけていきました。術後3週には格子状の白濁は残りますが上皮はすべて再生し、しょぼつき等の症状も認められなくなりました。

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その後の状態も良好に経過しております。うっすら残っている角膜の白濁に関してはゆっくり目立たなくなっていきます。

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治らない角膜の傷の原因としてこの症例のような特殊な疾患も含まれます。原因をしっかり追求しそれに対しての治療を行っていくことが大切です。

変わったことがあればいつでもご相談ください。よろしくお願いいたします。