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犬の皮膚肥満細胞腫(指部)

症例は6歳のバーニーズマウンテンドッグです。

足の裏にできものがあり、痛がっているとのことで来院されました。身体検査にて左前肢の第4̪指の中節骨部皮膚に大きさ2㎝大のピンク色の腫瘤が確認されました。針細胞診の検査にて悪性度の高い肥満細胞腫の可能性が示唆されました。跛行も呈しているため飼い主様と相談し、まずは外科的切除を実施していくこととなりました。

場所が場所だけに腫瘍を取りきるためには指を1本一緒に切除する必要がありました。腫瘤とともに断指です。基節骨という指の根元の骨から切除しました。切除後の皮膚はきれいに覆うように縫合していきます。

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術後翌日より、多少の痛みはありますが歩行可能になりました。

2週間経ったころにはほぼきれいに治癒し、歩行も問題なくできるようになりました。

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病理検査結果:肥満細胞腫、グレード2-3/高グレード

腫瘍組織は切除されていますが、異形成がとても強く(悪性)、転移や再発が多いため今後の注意深い経過観察が必要とのことでした。

肥満細胞腫は低グレードのものであれば外科的切除で完治ができる腫瘍の一つですが、本症例のような高グレードのものは話が別です。効率に再発・転移を引き起こすため術後の抗がん剤や分子標的薬が必要となります。教科書的な生存期間の中央値も低グレードでは2年以上ですが、高グレードのものは4か月以下と大きな差が記されています。

 

本症例は飼い主様としっかり相談し、治療方針を決定していきます。まずはビンブラスチンという抗がん剤を使用しましたが、切除後2か月のところで尾に再発が認められました。以降はパラディア(トラセニブ)という分子標的薬を使用して腫瘍の進行予防を行っていきました。

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約半年は元気に過ごすごとができましたが、最終的には術後約8か月のところで多臓器不全にて永眠された症例です。

 

大型犬には悪性腫瘍が多いと言われています。肥満細胞腫も高グレードであるとなかなか厳しい腫瘍の一つになります。愛犬・ご家族が笑顔で過ごせるよう、少しでもお力添えできればと思います。

変わったこと気になることがあれば何でもお気軽にご相談ください。よろしくお願い致します。