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犬のアトピー性皮膚炎

症例は8歳の柴犬の男の子です。約2年前から皮膚の治療をしているがあまりよくならないとのことで来院されました。痒みもかなりひどく散歩中や睡眠中でも痒がってしまうほどでした(痒みレベル8-9/10)。

身体検査にて、腋窩部から腹部、後肢にかけての皮膚で重度の色素沈着、紅斑、腫脹、脱毛、苔癬化が認められました。院内でもしきりに痒がるそぶりが見られました。顔面は比較的クリアーでした。外部寄生虫性疾患は完全に除外します。

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仮診断:アトピー性皮膚炎を第一に考えます。

犬のアトピー性皮膚炎は遺伝的素因を背景とした慢性掻痒性皮膚疾患であり、耳や四肢に特徴的な臨床症状を呈し、その多くが環境アレルゲンに対するIgEの増加を認めると定義されています。また、アトピー性皮膚炎の個体は皮膚の水分が蒸発しやすくバリア機能がもともと弱いことが知られています。そのためにアレルゲンの暴露によって簡単に皮膚炎が起き、二次感染も起こしていくと考えられます。発症年齢は6か月~3歳ごろまでが多く、年を重ねるごとに症状がひどくなる傾向があります。好発犬種として、柴犬、トイプードル、フレンチブルドッグなどがあげられます。

治療の柱は、①痒み炎症の管理②抗原刺激の回避③細菌やマラセチアの二次感染の管理④皮膚のバリア機能の強化になります。

 

本症例は初めにステロイドと抗生物質で治療しました。皮膚バリア機能アップのためのフードも使用しています。約1週間の治療で痒み自体は半減されました。以前と比べるとだいぶ寝れており、散歩中の痒みも減ったとの印象でした(痒みレベル4-5/10)。

症状の改善を確認しながらステロイドは徐々に漸減していきました。約1か月の治療により皮膚の状態もだいぶ改善しました。発毛も徐々に認められますが、まだ赤みは残ります。

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ステロイドの漸減により痒みの再発が認められたため、痒みコントロールの治療をオクラシチニブという副作用が少ないものへ変更していきました。初診時から約半年には痒みほとんどなく良好にコントロールされています。内股部の色素沈着は残りますが、発毛を認め、皮膚の赤みや苔癬化は消失しています。

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約2年経過した今もオクラシチニブの2日に1回の投与は必要ですが良好にコントロールされています。内股部の色素沈着も少し薄くなりました。痒みはたまーに掻くくらいとのことです(痒みレベル1/10)。

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今回の症例は柴犬に多いアトピー性皮膚炎でした。基本的に完治する疾患ではなく薬と日常ケアによりコントロールしてあげるものになります。そのため、病院だけの治療ではなく自宅でのケアが必要不可欠になります。飼い主様と協力して愛犬の痒みのストレスを緩和する手助けができればと思っております。

気になることがあればいつでも気軽にご相談ください。よろしくお願いいたします。