DSCN6204

犬の尿酸アンモニウム結晶

症例は5か月齢♂のブルドックです。数日前から尿が出ずらくなり、食欲もなく吐き気や違和感で寝れていないとのことで来院されました。

来院時は膀胱がパンパンに触知され、本人も排尿しようとふんばるがほんのわずかしか出ずかなりつらそうな様子でした。レントゲン検査では明らかな結石陰影は確認されませんでしたが、超音波検査では小さな結石陰影が認められ、重度に拡張した膀胱と尿道が確認されました。

1

(重度に拡張した膀胱です。)

2

(前立腺部の拡張した尿道です。)

診断は物理的な尿道閉塞です。放っておくと命に関わる緊急的な状態なのですぐに閉塞の解除が必要になります。かなり強固な閉塞でしたがなんとか膀胱までカテーテルを通し、尿をすべて抜去しました。その後膀胱内をきれいに洗浄し、丸1日カテーテルを入れっぱなしにして管理していきました。カテーテルを通しているので尿は自動的に排出され、膀胱に負担をかけることはありません。運よく膀胱内にあった小さな結石も2つ排出されました。尿検査では、“尿酸アンモニウム”という珍しい結晶が認められました。

DSCN6209

(洗浄前)

DSCN6210

(洗浄後)

DSCN6217
(結石)

尿酸アンモニウム

(尿酸アンモニウム結晶)

尿酸アンモニウムはおしっこが高尿酸尿症という状態になっていると出ます。ダルメシアンでの遺伝的なプリン体の代謝異常が有名ですが、ブルドックも同様の代謝異常が認められることがあると言われています。また、特殊な肝疾患の際にも認められます。この結石はX-ray透過性なため、レントゲン検査では検出が難しいようです。

本症例は、特殊な肝疾患は各種検査より否定的であったため、元々プリン体の代謝能が低いものと考え、今まで与えていた肉類や骨類の食事を止め、ドックフードのみの食事で管理してもらうこととしました。プリン体は人同様、お肉やお魚、骨などの高蛋白のものから産生されます。代謝能が低い分その原因となるものはできる限り少なくするという考えです。翌日に退院してから、排尿はスムーズにできており、尿線も徐々に太くなっていきおいよく出ているとのことでした。2週間後の尿検査では、結晶はきれいに消失しており特に問題ありませんでした。ドックフードだけの食事でも結晶が出てしまうような状態だと大変でしたが、本当によかったです!!!

 

今回、ブルドックという犬種で尿酸アンモニウム結晶がプリン体の代謝異常により認められた珍しい症例でした。結晶の正体を突き止め、適切な対処ができたことで治療および今後の方針をスムーズに決めることができました。食事管理を行っていけば問題となることはないと思います。変わったことがあればいつでもご相談ください。よろしくお願いします。